食料需給の逼迫

農業、漁業の収穫・漁獲量減少(1)

個別社会課題

農業、漁業従事者の高年齢化で収穫・漁獲量は年々減少し、それに伴い食料自給率も落ちていく

ソーシャルニーズ

熟練者のノウハウをトラクターにプログラミングすることで、耕起から管理収穫まで一貫して自動で行う技術・システム

ビジネス事例

アグリロボトラクタ(クボタ)

クボタは業界に先駆け、有人監視下における無人自動運転農機「アグリロボトラクタ」を開発し市場に投入した。
「耕うん→田植え→刈り取り」という稲作における一年の流れと、畑作での畝立て&野菜植え付けを完全自動運転で実行できる。技術的にはGPS情報を正確に走行に反映させる制御精度の高さが支えている。
クボタは、このトラクターの市場導入により、慣れていない人でも農作業ができて安全かつ低コスト、生産性も高い高精度な次世代農業を目指しており、IoTの活用によって農作業は機械に、人間はより創造性を発揮する作業に専念させようと考えている。
現在農業は就業者の高齢化に伴う規模の拡大から、短時間で農作業を効率よく、正確にできる機械が求められている。アグリロボトラクタは、完全無人化、自動化されたロボットトラクターであり、従来の農機よりも、農作業の高効率化や高精度化、省人化、軽労化を可能とする。

食料需給の逼迫

農業、漁業の収穫・漁獲量減少(2)

個別社会課題

元々穀物生産に適していない地域は、人口増と収穫量減少により大幅な食糧不足となる

ソーシャルニーズ

乾燥帯農地でも、最適な水分・肥料補給により穀物生産を可能とする技術・システム

ビジネス事例

点滴潅水(ネタフィム)

ネタフィムはイスラエルの「点滴灌水」技術のトップシェア企業であり、1966年に点滴潅水技術を開発した。
点滴潅水とは、配水管、チューブやエミッタ、弁などからなる施設を用いて、土壌表面や根群域に直接ゆっくり灌漑水を与えることで、水や肥料の消費量を最小限にする灌漑方式。
砂漠地帯で農業を展開するイスラエルでは、水の節約のために点滴潅水が開発された。その後、ゆっくり1滴ずつ灌水することで、根に必要な酸素が土中に保たれて根の活動が活発になることもわかり、すぐれた農作物を育てる技術へと発展していった。点滴灌水技術の利用により、同国の単位水量当たり農業生産性は47%向上したとされる。
ネタフィムは、アフリカ、中国を含め世界中に点滴灌水技術を輸出しており、日本でもカゴメのトマト農園をはじめ、導入事例が増加中。

食料需給の逼迫

農業・漁業の収穫・漁獲量減少(3)

個別社会課題

アフリカの一部地域では、カカオの生産を継続するために子供を強制労働させるなど前近代的なしくみの中で非効率的な農業が行われて貧困にあえぐ

ソーシャルニーズ

農作業を改善するための研修や、児童労働を未然に防止するための児童労働モニタリングの仕組み

ビジネス事例

カカオプラン(ネスレ)

ネスレのカカオプランとは、チョコレートの主要原材料であるカカオの供給を確保し、高品質のチョコレートを製造して消費者に届けることを目標に、カカオ農家や農場で働く人々を支援し、彼らが暮らす地域社会の健全性を確保するために始めた取り組み。
プランの柱としては以下の3点がある。
①カカオ農家がより高収益な農場経営を可能とするための教育支援
②社会的状況の改善として、児童労働の排除、児童の就学支援実施
③サステナブルで高品質なカカオ購入のためのサプライチェーン開発、環境保全
特に②では、あらゆる形態の児童労働搾取に徹底的に反対し、児童労働モニタリングと改善要請システム(CLMRS)を実施。カカオのサプライチェーンにおける児童労働を特定することで、根本的原因の把握と適切な対応策の立案に貢献している。

フードロス・廃棄増加

食料の過剰生産

個別社会課題

消費者の高すぎる安全志向と、必要以上に入手した食材や料理を残して無駄にすることが、年間632万トンも食料廃棄につながる

ソーシャルニーズ

大がかりな仕掛けを必要としない、自分にとって必要がなくなった食料を、必要とする人に簡単に譲ることができるシステム

ビジネス事例

おすそわけアプリ(OLIO)

英国出身のTessa Cook、米国アイオワ州出身のSaasha Celestial-Oneによってロンドンでリリースされたアプリ「OLIO」は、ユーザー間で余った食料を「おすそわけ」することができるアプリ。
近所同士の「余った食材」をシェアすることで、食料廃棄の削減を目的としている。必要な人にとっては食料を得られて、必要ない人は廃棄をしないで済む。
ユーザーは「OLIO」に譲りたい食料の画像をアップロードし、譲り渡し場所や日時など入力して投稿すれば、誰もが閲覧できて、欲しい食料を見つけた人がアプリから所有者に連絡して引き取りに出向くシステム。
利用者は一般家庭だけではなく、地元のコミュニティ、企業、食品店なども含まれ、店舗では一日の終わりに売れ残った食べ物を廃棄しなくても済むようになった。
「OLIO」は18万以上のダウンロード数で、ロンドンだけではなくスウェーデンやアメリカでも人気のあるアプリとなっている。

フードロス・廃棄増加

食料供給エリアの偏在

個別社会課題

生産供給地から消費地へ長時間輸送する間に発生するフードロスや、店舗に届いた後の保管中に痛むことでフードロスが発生する

ソーシャルニーズ

栄養価の高い原料をベースにした苗床を3Dプリンターで印刷し、植物の種を植えてまるごと食することができるシステム

ビジネス事例

食用3Dプリンタプロジェクト(Edible Growth)

Edible Growthは、オランダのフードデザイナーChloe Rutzerveld氏が開発した「健康的で持続可能」な食用スナックを3Dプリンタで印刷するプロジェクト。食品の育成プラットフォームを3Dプリントし、そこで植物やキノコ等を育て、そのまま丸ごと食べることができる。
3Dプリントされるのは外側のスナック部と、真ん中の寒天で出来ている部分。ここに植物の種やキノコの胞子・イースト菌などを加えることで培養を可能にしている。3~5日間待てば、寒天培地からスプラウトやキノコが芽生え、成長すると食べられる。
開発者は、Edible Growthが3Dプリントによる食品産業の変革の兆しと考えており(現在コンセプト段階)、市場投入にはあと8年程かかると想定している。

水資源不足

良質な水資源の不足

個別社会課題

降雨量の少ない中東国は都市で使用する良質な水が慢性的に不足することから、海水の淡水化が必須となり、そこに多大なエネルギーがかかってしまう

ソーシャルニーズ

飲料水質基準を満たす水を、海水から安定的かつエネルギーを極力抑えて生産できる技術・システム

ビジネス事例

省エネ型海水淡水化技術(日立製作所)

省エネ型海水淡水化システムは、日立製作所の持つ技術をベースに、降雨量が少なく淡水資源に乏しいサウジアラビアの慢性的な水不足を解決するための実証事業(NEDO、内閣府他)で使用されている。
省エネ型海水淡水化技術は、従来の海水淡水化手法である蒸発法に比べ、エネルギー消費量が比較的少ないとされる逆浸透膜法(RO膜法)による海水淡水化の、さらに先をいく省エネ化を実現。RO膜法で必要だった高圧ポンプの稼働等によるエネルギー消費量を約2割削減する。
中東ではサウジアラビア同様に、慢性的な水不足問題を抱える国が多いため、この実証事業の成果をもって、他周辺国においても、省エネ型海水淡水化技術を活用したシステムによって課題解決を図っていく。

水資源不足

量的な水資源の不足

個別社会課題

水道インフラがないため、遠くの井戸や川から必要な水を人力で大量に運ぶ「水汲み」が必要となり、担当する女性や子供の時間的、体力的な負担が大きい

ソーシャルニーズ

水の運搬時間を短縮すると同時に、運搬時の身体への負担を極力少なくすることができる技術・システム

ビジネス事例

ヒッポ・ウォーター・ローラー(Hippo Roller)

1991年に南アフリカ出身のエンジニア、ペティー・ペッツァーとジョン・ヨンカーによって開発されたローラー式タンク「ヒッポ・ウォーター・ローラー」は、一度に90キロ(従来の人手に比べて約5倍)の水を運べるため、毎日行っていた水汲みを週に数回で済ませることが出来る画期的な発明。現在20ヵ国以上で利用されている。
アジア・アフリカの国では、大量に必要な安全な水へのアクセスのために、毎日6キロもの道のりを往復、その作業のほとんどを女性や子供が担っており、時間がかかるだけでなく水の入った重いバケツ(およそ20キロ)を頭の上に乗せて運ぶため、健康面での問題も発生していた。
ヒッポ・ウォーター・ローラーは、タンクをローラーのように押して運べる仕組みのため、大きな負荷がかからず大量の水を運搬できる。
また、開発者は子供達の水汲みの時間を教育に充てることが出来れば、他の様々な課題解決にもつながると提案をしている。

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