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暮らしの未来

【自律社会としてのスウェーデン(13)】
デジタル社会スウェーデン

三瓶恵子(ストックホルム在住)
2015.01.01

 スウェーデンはIT(情報技術)大国だ。なにを基準にしてそう言い切るのかについてはいろいろ異論もあるかもしれないが。政府の「情報社会戦略」では、スウェーデン社会のすべての分野でデジタル化を促進することが目指されている。政府の方針には以下の分野が含まれる。
1、ネットおよび情報の安全性を含むITと電子コミュニケーションの規制と促進
2、周波数割り当て政策
3、インターネットの管理
4、ブロードバンドおよびITインフラへのアクセス

 政府は上記の分野でのIT促進を踏まえたうえで、「電子政府」の拡充を目指している。これは、国民の費用負担を軽減し、簡便にサービスを提供することを目指すもので、各種当局がその体制を整えるべく、2015年から2018年までの期間に毎年4500万クローナ(約6750万円)の予算配布を計画している。
 2015年にはいくつかの国家当局で優先的に以下のようなデジタル化がすすめられる。
  1、住宅建設分野のデジタル化の促進
  2、全国の環境情報の活用におけるデジタル化の促進
  3、企業活動に関する手続きのデジタル化による簡略化
  4、医療分野における、患者と職員の負担を減じる、目的別の情報処理

 政府の目指すところは、要するに、国民が当局や社会との間の連絡を電子的に、統合的に行う、ということだ。そのために、2016年までに国民一人一人に「電子認証」を与え、2017年までに各当局との統合コンタクト・ページである「私のメッセージ」ページが開設されるらしい。

 現在でも、電子認証(銀行などが発行している認証カード)で入る、お役所サイトの中の「私のページ」があって、それを使用しないとなかなか連絡が取れなくなってきている。たとえば、税務署サイトの中の「私の税金口座」ページ、医療機関と連絡を取るための「私の医療コンタクト」ページ等々。最近では携帯電話からそれらのページへアクセスすることも推奨されていて、そのためのアプリケーションも盛んに開発されている。私はまだ携帯電話の電子認証は設置していないが。

 当局とのコンタクトばかりでなく、一般社会の中でもデジタル認証が進んでいる。たとえば、ストックホルムの地下鉄やバスの切符はSuicaのようなカードが一般的だが、携帯電話での「切符」がだんだん浸透してきて、乗客がワンマンカーの運転手に、水戸黄門のように携帯電話を突き出して乗ってくる。老眼の運転手だと見るのが難しいのではないかと傍目にハラハラするのだが。ちなみにストックホルムのバスではもはや現金を使うことができない。事前にキヨスクなどで切符を購入するのだが、それもだんだん電子化される途上にある。

 最近では小売店での「電子領収書」も一般的になってきた。電子領収書は2年前に国税庁が正式の領収書として認めたもので、小売店がメールあるいはアプリで携帯電話に送るものだ。商品を交換するときに領収書を見せねばならないので、たとえば、遠方の親戚の子どもに服を贈って、サイズが合わずに交換したいときに、電子領収書ならばそれを電子的にすぐ送ることができるというメリットもある。見ていると、スウェーデン人はじつによく交換する。子育て中の知人は「とりあえず目についたものは手あたり次第買って、家に帰って着せてみて合わなければ翌日返せばいいんだから」と言う。電子領収書は、レジで客の携帯電話の中に入っているアプリケーションに送られる。客のパーソナルナンバーと連携していて、クラウドに保管され、客は後にそこからスマート・フォーンにダウンロードする仕組みだ。紙の領収書は多くの場合感熱紙に印刷されており、時間がたつと印刷した文字が消えてしまうという齟齬があるが、電子領収書ならばそのような危険はない。

 Swedbankは最近「デジノミクス-新経済牽引力」というレポートを発表した。その中で、現在のスウェーデンの職業の53%が20年以内にデジタル技術で置換される、と結論付けられている。現在、スウェーデンのスーパーマーケットは、客が自分でバーコードをスキャンして、カードで精算するラインをどんどん導入している。現在では手動のレジと並列しているが、将来的には人間はレジからいなくなるだろう。
 たとえば音楽の電子的購入、サービスの電子取引など、社会のいろいろな分野で進むデジタル化の影響は、GDPなどの公式統計にはなかなか現れてこないので、注意が必要だと、上記レポートは警鐘を発している。

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