一時は「もう到達してるから別にやることないっしょ感」があったスウェーデンの男女平等であるが、ここにきてまた注目を集め始めている。「男女平等は創造性を高め、生産性を向上する」というテーマのセミナーに参加してきた。今日のセミナーは、ビジネス雑誌「週刊ビジネス」(Veckansaffarer)とユニオン(Unionen。大手労働組合)の主催で行われたもので、外務省で平等問題にかかわるリーサ=エメリア・スヴェンソン氏とコカ・コーラ・スウェーデン社の人事部長アルネ・ダールベリィ氏がメイン・スピーカーだった。
スヴェンソン氏は、長らくニューヨークのスウェーデン大使館などで勤務してきたが、外交交渉などにおいても、スウェーデンとアメリカの男女平等観の違いは歴然としていて、若いスウェーデン人女性としては戸惑うことが多かったと語り、スウェーデン社会の組織はフラットであることを実感したと語った。スヴェンソン氏はまた、スウェーデン語の「平等」(Jamlikhet)が「男女平等」(Jamstalldhet)より重要であると指摘した。「平等」は、いろいろと異なる条件を持った人々全部を対象にしたもので、「男女平等」は性差に基づく不平等を問題にしているという違いがある。「平等」は、その前提として、社会にはいろいろな人々がおり、価値観や文化などもいろいろある、その多様性をいかに受け入れるかが問われているのだ、と説明した。
ダールベリィ氏の勤務するコカ・コーラ・スウェーデン社は2015年に「産業界における男女平等賞」を受賞した企業で、職場の中の多様性の保持に力を割いている。同氏によれば、コカ・コーラ・スウェーデン社の工場(コカ・コーラの素はアメリカから輸入されるが、砂糖や水は現地調達で製造される)にはもともと男性労働者が多く、殺伐とした雰囲気だったのだが、意欲的に女性をリクルートすることによって職場の雰囲気が大幅に変わったという。機械の故障が大幅に減り(男性従業員はそれまで機械を蹴っぽっていたのか?)、職場の喧嘩が減ったという(女性がいると男性の気性の荒さが減少するのか?)。同社では、女性を積極的にリクルートするために特別のPRヴィデオなどを作ったり、せっかく入ってきた女性が嫌気をさしてやめないように彼女たちを支える社内のネットワークに力を入れたりもしている。女性のためのネットワーキングは、コカ・コーラ・グループのヨーロッパ内支店全体にもおよび、仕事として=勤務時間中に=情報交換をしているとのことだ。
両氏の強調したポイントは、多様性を受け入れることによって生産性が増し(採算量が上がったり、外交交渉がうまくいったり)、新たな視点に気づくことによって創造性が増した、ということだ。男女平等はまず第一義的にリクルートの問題ととらえられているのがスウェーデン的だと思った。