COLUMN

2003.01.31中間 真一

寒中お見舞い申し上げます「教育」が熱くなってきた!

 今冬は寒い冬となりました。12月の東京の平均気温は前年よりも低く、平年よりも低い。やはり、寒いのは気持ちだけではないようだ。懐はどうだろう。先月12月のサラリーマン世帯の消費支出を見ると、支出総額では実質3.5%減少。年平均の昨年の消費支出も5年連続の減少となったとのことだ。消費回復はしていない。懐も寒いままだ。しかし、昨年12月の消費支出をサービス区分別に見ると、3つの費目だけが対前年同月よりも増加していた。「光熱費」、「保健医療費」、「教育費」である。やはり、寒くなって暖房費がかさみ、インフルエンザや長引く風邪が流行っているからだろう。

 それでは、もう一つの増加費目「教育費」は、どのような理由があるのだろう。ここに含まれるのは、授業料、塾や予備校など補修授業料、加えて、そのための参考書などである。金額にして、1ヶ月あたり14,702円という数字が算出されている。この金額を、みなさんはどう感じるだろうか。内訳を見ていくと、都市部であるほど金額は多くなる。世帯年収も上がるほど金額は増える。中学校からの私学志向が高いことから考えれば当然のことだろう。しかし、子どもが通学中の親の立場から見ると、この金額は低すぎる。実際、世帯主が40代後半に限れば38,686円、50代後半では3,891円という大きな差がある。平均値の支出からは、当事者の支出実感は想定しにくい。我が国の平均貯蓄額と同じだ。

 もう一つ、本日公表されたデータに、昨年2002年の消費者物価指数がある。これもまた4年連続の下落である。消費も物価も下落する。つまり、デフレとなるわけだ。しかし、物価10大費目指数の中に、1.0%ながら唯一前年度比で上昇しているものが見つかった。これも「教育」だ。他の全ての物価が下落する中、授業料、塾などの教育費、そのための教材費は、どれも上昇している。

 教育に関連する経済的な価値観は、物価指数が上昇しても、消費も連動して上がっていくという結果である。高くなるなら控えておくという財布事情の対象から、唯一除外された費目、「聖域」と考えることができる。教育は、それほどまでに、家族の中で高い価値を置いている領域なのだ。

 それでは、実際の教育現場では、このような高い価値と期待に見合うサービスや指導がなされているのだろうか。子どもたちや親、地域や社会全体の満足を得るのに充分な活動がなされているのであろうか。もし、これが充分であれば、毎日のように教育がメディアをにぎわすことはないだろう。今や、学校や行政だけには任せておけずに、企業、経済団体や経済関係行政までが、教育に大きな関心を持つまでになっている世の中だ。これは、少し前のイギリス、アメリカにも見られた現象だ。成熟社会への大きなステップとして「教育」という課題があるのかもしれない。

 構造改革特区構想第2次募集の中から、教育特区の34件が実現可能の判断を下された。これらは全て、株式会社による学校設立である。いよいよ、教育の世界も経済の論理が入ってくる。経済の論理は、単にコスト削減による利潤追求ではない。満足度の向上が期待できる。ここで問題となるのは、何が満足のためのサービスなのかだ。これこそ、教育改革の大きな問題であり、受益者の市民の側にも大きな責任のある部分だと思っている。学校を薄っぺらい進学コンビニにしてはならない。明日からは、東京で多くの私立中学校の入学試験が始まる。      

(中間 真一)
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