COLUMN

2008.05.01中間 真一

驚いた、アウトレットモール人気

 箱根方面に出かけたついでに、アウトレットモールに立ち寄った。午前10時、オープンの時刻には、モール入口周辺の道路は駐車場に並ぶ車で長蛇の列。入口から遠い駐車場からは、ほとんど待たずにシャトルバスが送迎する。都心からはツアーまであるらしい。この連休中には、高速道路のサービスエリアを駐車場として送迎サービスまでするという。新聞を見ると、埼玉にオープンしたばかりの国内最大級アウトレットモールによる周辺交通麻痺状態が報じられ、ゴールデンウィーク中には毎日1万台以上の車がやってくるという予想まで出ていた。なぜ、それほどの人気があるのだろう?単に、ブランド品を少しでも安く手に入れるためなのだろうか?

 アウトレットモールに出かけても、何も欲しいものも無く、人混みの中を漂うのも疲れるので、いつも時間つぶしには苦労する。そこで、今回は来場者を観察し続けてみた。入口付近で観察していると、やはり、個人で買い物に来ている人はほとんどいない。年代として最も多いのは30代くらいだろうか。家族やカップルがほとんどだ。大家族のグループもかなりいる。ペットのイヌまで連れて来ている人もかなり多い。要するに、「親しいみんなで出かける場所」なのだ。しかし、なぜアウトレットモールは、みんなででかけるのに好都合な場所なのだろう?確かに、欲しいものを少しでも安く買い求めるためには、効率的な集積だが、消費不況と言われる昨今、みんなそんなに欲しいものを抱えているのだろうか。

 今度は、モールの中のベンチに座って目の前を通る人たちを眺める。すると、両手にいくつもの買い物袋を抱えているような人は少ない。高価な海外ブランドの贅沢な紙袋を一つとか、スポーツ用品ブランドのビニール袋一つとか、駅ビルやデパートでよく見るようなショップの袋をいくつか提げているとか、そんな程度に見受けられる。また、場内ではいっしょに来たグループが、集まったり離れたりを繰り返している。自分自身の気に入ったものを探したら、相方を呼んでいっしょに見るという具合だ。そのために、携帯電話は欠かせない道具のようだ。

 もちろん、私のように手持ちぶさたでつまらなそうにしている人はほとんどいない。みんな、とても楽しそうでハッピーそうな表情で、目の前を行き来している。そういう幸せそうなたくさんの顔を見ているうちにわかった!「ここに来ている人たちは、モノを買い込むために来ているのではない。楽しさを求めて来ている!ここは、買い物というレジャーのテーマパークだったのだ」と。「(高いものが)安い」、「(選べるものが)多い」、「(いるだけで)楽しい」、豊かだけど、心の豊かさの時代には至っていない現代の欲望の表れとも言えるだろうか。

 こうしてみると、アウトレットモールという現代の欲望のたまり場から、いろいろなことが考えられそうだ。商売は、もともと作った人が欲しい人に頒けるところから始まっている。その後、作った人と欲しい人の間に、何段階ものステップが挟まり、次第に作り手から離れていった。そして、アウトレットは文字どおり最終段階、作ったものをお釈迦にする直前で、欲しい人に出会わせるということになる。さて、私たちの欲望と消費は、アウトレットの先にどのような場に向かうのだろう。と、人混みの中で考えた。
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