COLUMN

2007.04.01鷲尾 梓

「育休パパ」のはじめの一歩

 約200人に1人。日本人男性の育児休業(育休)取得率は極めて低い。少子化がすすむ中で、政府は、「子ども・子育て応援プラン」(2004年12月)を作成し、10年後までに男性10%、女性80%に引き上げることを目標に掲げているが、2005年時点での育休取得率は、女性72.3%に対して、男性は0.50%。目標への道のりは遠い。

 男性の育休取得がすすまない理由には、「休業中の業務に支障があり、他の従業員の負担が増える」「休業中の収入減によって家計が圧迫される」という実質的な問題をはじめ、「評価や将来のキャリアへの影響が心配」という不安、「過去に休業した人がいない/少ない」という漠然とした抵抗感などがあげられる。育休の制度について知識がなかったり、自分とは縁のないものととらえている男性も少なくないようだ。

 シンポジウム「少子社会における社会保障と働き方」(2007年2月27日:社会福祉法人恩賜財団母子愛育会・厚生労働省 共催)で、男性の育休について取り上げた岩男壽美子氏(慶應大学名誉教授)の問題提起の中で強く印象に残ったのは、「育休はたった1日でも大きな効果がある」ということだった。「育休というと、長期間職場を離れることをイメージする人が多いですが、『数日間だけ』『一週間に1日』『一定期間は残業なし』など、育児のための労働時間の調整には様々な形があります。その中からそれぞれに合った組み立てをすればよいのです。そして、育休は、短期間でも確実にその人自身に変化をもたらします」-岩男氏の説明に、私自身、育休について固定的なとらえ方をしていたことに気づかされる。

 1日責任を持って子どもの世話をするという経験、平日の日中の街並みや子どもに付き添っていく公園など、普段接する機会のない世界に接することの意義は大きいという。長期間、まとまった休みを取ることはハードルが高くても、とにかくできる形からはじめる、最初の一歩を踏み出すことから始めてみてはどうかという岩男氏の主張には、説得力があった。
 今、少子化という一大事を通して、安心して子どもを生み育てられる社会のあり方を、社会全体で真剣に考え始めている。それは、男女ともがゆとりをもって、より人間らしく生き方をできる社会の姿の模索でもあるように思う。男性の育児休業の問題は、子どもを育てるという「次」の世代に関わる問題であると同時に、男性自身、「今」の世代自身の柔軟な生き方、働き方をみつめなおすチャンスでもある。(鷲尾梓)
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