毎年恒例となっている、Fortune誌の「アメリカで最も働きがいのある企業ベスト100(100 Best Companies to Work For)」が発表された。2006年の1位は、IT関連企業のGoogle。
「働きがいのある企業ベスト100」は、全米446社、10万人の会社員を対象とした調査結果に基づいている。選考にあたって軸となるのは、従業員による自社の評価(経営陣に対する評価、自分の仕事への満足度、会社の同僚との関係についてなど)と、企業側の提供する労働条件・労働環境(給与水準、福利厚生、年齢構成や企業文化など)のふたつ。特に、従業員による自社の評価にウェイトが置かれ、総合得点の2/3を占めている。
Googleは、今回初めて「創業後7年以上」という選考条件を満たし、初登場で1位を獲得した。世界各地の料理を味わうことのできる無料カフェテリアや、スイミングスパ施設、洗濯・クリーニングサービス、社内に常駐する医師による無料診察などの充実した職場環境には、目をみはるものがある。ここまでとはいかないが、ランキングのトップ100企業のうち、社内に保育施設を持つ企業は32社にのぼっている。優秀な人材を確保し、そのモチベーションを高めるためにも、従業員が快適に働くことのできる「環境」(ハード)を整えることはますます重要な要素となっていくと考えられる。
もうひとつ注目したいのは、従業員のモチベーションを高める「しくみ」(ソフト)のあり方だ。Googleの社員には、就業時間の20%を自分の独自プロジェクトにあてる「20%ルール」が義務付けられているという。通常の業務と直接関係のない活動に携わることで新しい発想が生まれたり、将来的に企業に貢献することがねらいだ。"Google News"や"Gmail"、"Google Finance"などの現存するサービスは、いずれもこのプロジェクトから生まれたものである。
プロジェクトの内容は自由であるため、職場環境に関するテーマに取り組むこともできる。ある女性社員のアイディアからは、通勤のための「シャトルバス」の導入が実現した。シリコンバレーの通勤渋滞に悩まされていた彼女は、「シャトルバスを導入する」という思いつきから、経路の考案やバス会社との交渉など、さまざまなリサーチを重ね、アイディアを実現に結びつけたのだ。
自分のアイディアが形になる、自分の環境を自分で変えられる、と感じられるときに発揮される力の大きさを、私たちは経験的には知っている。しかし、組織の中で与えられた仕事をこなすことを優先するうちに、その力を抑え込んでしまってはいないだろうか。Googleは、「20%ルール」を通して「あなたのアイディアを尊重する」という企業の姿勢を具体的、かつ現実的なかたちで従業員に伝え、その力を引き出すことに成功している。「働きがいのある会社」トップのハード面を真似ることは難しくても、ソフト面に学ぶことは少なくない。
<参考>
CNNMoney.com "Google is No.1: Search and enjoy":