COLUMN

2020.12.01小林 勝司

対処療法と原因療法で、経済システムを“治療”する

オムロンの未来予測理論「SINIC理論」では、将来、自律社会が到来し、地球環境の許容能力に収まる経済システムが再設計され、地球環境保全と人類社会の繁栄が両立すると予測している。

しかしながら、現代社会の経済システムは、依然、短期的な利益の最大化を目的としたリニア・エコノミーが主流である。大量生産・大量消費・大量廃棄により温室効果ガスの排出と化学汚染を繰り返し、自然災害の甚大化と資源枯渇を招いている。さらに、こうした環境問題は社会課題に直結しており、温室効果ガスの排出と化学汚染は、安全衛生問題、低賃金雇用、格差拡大を生み、自然災害の甚大化と資源枯渇は、人々の健康被害、政情不安、政府財政のひっ迫を生み出している。つまり、リニア・エコノミーは、地球環境保全と人類社会の繁栄を両立させる経済システムとはとても言い難いのだ。

他方、経済システムの再設計に向けた動きも顕在化している。廃棄物を排出することを前提としながらも、可能な限り再利用を促進するリサイクリング・エコノミーや、そもそも廃棄物と汚染を発生させないことを前提としたサーキュラー・エコノミーへの潮流である。とりわけ、サーキュラー・エコノミーは、持続可能な社会の実現といった長期的な利益の最大化を目的としており、自律社会で実現すべき経済システムそのものと言える。

エレン・マッカーサー財団では、サーキュラー・エコノミーを加速させる3原則を、①廃棄物と汚染を生み出さないデザイン(設計)を行う、②製品と原料を使い続ける、③自然システムを再生するとしている。言うまでもなく、③の自然システムを再生することとは、循環を帰結させることに他ならず、①と②に取り組んだ結果でもある。一刻も早く、全ての企業が、既に廃棄物が飽和状態にあることを認識し、その対処療法として、リサイクルシステムの構築に努めつつ、原因療法として、廃棄物と汚染を生み出さない製品デザイン、製品寿命の延伸、サービスとしての製品開発に着手すべきである。

自社で何を推進すべきか、何を成すべきか。これからの10年に向けた明確なビジョンと確かな実行力が、自律社会を引き寄せる。
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