COLUMN

2019.08.05小林 勝司

ミレニアル世代とZ世代の価値観から探る自律分散型コミュニティ

 オムロンのSINIC理論では、2030年に到来する自律社会では、自律分散型コミュニティが主流化すると予測する。こうした流れを牽引する存在とは、紛れもなく、ミレニアル世代(1981~1997年生まれ)とZ世代(1998~2016年生まれ)(※)であり、とりわけ後者だ。
 彼らに共通する価値観とは、他者との“つながり”を強く求めているという点だ。何故、そこまでつながりを強く求めているのか。一言で言えば、つながりの中でこそ、人生の意味、つまり“meaning”を見出だすことが出来ると確信しているからである。
 ミレニアル世代とZ世代とでは、つながりに対する意識が異なる。ミレニアル世代は、思春期よりSNSを多用し始めた、所謂、“後天性のネット民”である。彼らは、つながることで世界は変えられると信じてきたが、未だに、その“meaning”を見出せずにおり、結果的に、つながること自体が目的化・形骸化しつつある。確かに、シェアハウスやコワーキングといった、多様なつながりを顕在化させてはきたが、それによる新たな対立や孤独といったデメリットを最も実感しているのも彼らである。ご存じの通り、ミレニアル世代の代表選手と言えば、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグであるが、彼は、世界27億人ものつながりを築き上げてきたが、同時に個人情報の独占という負の遺産ももたらし、本来の“meaning”を見失いかけている。今、彼は、リブラという独自の仮想通貨を立ち上げることで、独占から分散への脱却を図ろうとしてはいるが、抵抗勢力からの圧力は強く、まさに“meaning”を模索している葛藤の渦中にある。
 一方で、生まれながらにしてSNSを利用する、“先天性のネット民”とも言えるZ世代は、つながりに求める“meaning”がある程度、明確である(とは言っても年齢の幅は広いので概ね10代後半といったところか)。IBM Institute for Business Valueの調査レポートによると、「大げさな機能やガジェットよりも、彼ら(Z世代)の実現したいことを後押しし、価値を直接高めてくれるテクノロジーを好む」と分析しており、スマートフォンとSNSは彼らの自己実現において無くてはならない存在と位置付けている。また、英金融大手バークレイズの調査レポートによると、「Z世代はミレニアル世代に比べ、未来志向で現実主義者、MeではなくWeを重視し、自立していて我慢強い」と分析、さらに、世界経済フォーラムの調査は、Z世代の87%が社会や環境問題に関心があることを明らかにしている。つまり、Z世代がつながりに求める“meaning”とは、社会に対する個人の影響力(Clout)を高めることであり、言われてみれば、昨年、タイム誌が発表した「世界で最も影響力のある100人」の中には、フロリダ州パークランドの高校での銃撃戦の生存者や18歳の環境活動家兼ラッパーなど、5人ものティーンエイジャーがランクインしているのだ。
 つながることで世界は変えられると信じてきた理想主義のミレニアル世代、つながりとは自分自身の目的意識と自主独往を実現するための現実的なツールと捉えている現実主義のZ世代。世代が代わるにつれ、つながりに対する“meaning”が徐々に変化しつつあるが、今後、ますますZ世代の自律的な意識が影響力を増していくに違いない。そして、来る自律社会は、多様な自律分散型コミュニティが顕在化しており、誰もが豊かな生活を享受できる社会となっていることだろう。
※ミレニアル世代、Z世代の年齢の定義は、諸説あります。
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