COLUMN

2019.03.01矢野 博司

SINIC理論の数式モデルとしての捉え方

 私が、オムロンの未来予測理論「SINIC理論」を活用して、 社会・技術・科学の未来を描き出すヒューマンルネッサンス研究所に来て、2年が経ちます。 日々、SINIC理論をベースにして、考え、活動しています。
 その活動のひとつに、理論を事業活用するために、理論の説明や社会課題を自分事として取り組むためのワークショップを行うことがあります。その説明で、もう少しSINIC理論を知っていただきたいと感じた点について、お話ししたいと思います。

 SINIC理論は、オムロンの創業者・立石一真が1970年の国際未来学会で発表した未来予測理論です。概要は、リンク先を参照してもらえばわかりますが、その本質は、歴史的、規範的展望を科学、技術、社会の円環的相互作用を基本構造として、社会が発展していくと捉えたことにあります。
 この捉え方や捉え方を表したSINIC理論の図は、ユニークであり、印象に残るのですが、いざ自分事として活用となると、難しくなってきます。基本構造の捉え方や社会課題が、自分のアイデアとつながりにくく、自分事して関連付けて発想することが難しい。私もなかなかできません。
 そこで、創業者は、この捉え方を数式モデル化し、解析を行いました。この数式モデル化して解析を加えた点について説明します。

 SINIC理論の基本構造である円環的相互作用で進歩発展していく社会の段階を10に区分し、その社会の進歩発展段階を出力とする、イノベーションと時間の関数と定義しました。つまり円環的相互作用で起こるイノベーションが時間とともに広がり社会が進歩発展する数式モデルを作成したのです。次に、数式モデルをベースとして、イノベーションを起こす要素に分解しました。例えば、イノベーションは、人間の進歩したいという意欲と、現在の社会状況といったように分解していきます。そして、その分解された要素を大きくしたり、小さくしたり、時間の変化による要素の振る舞いを明らかにしたりすることで、社会の進歩発展やイノベーションがどのように変化するかを考えます。このような思考実験や数式モデルのグラフ化を繰り返しながら、各要素の関連性を見直し、理論の検証など解析を深めていきました。
 例えば売上高などの数値の推移や比較をグラフにし、そのグラフから課題や傾向などを読み取りますが、同様にSINIC理論を数式モデル化し、解析していくことで、課題や傾向を明らかにし、理論に対する議論を深めていったのです。

 このように現象を数式モデル化して、そのモデルをベースとした要素や時間変化率から解析を深めていく試みは、自分が持っているアイデアを社会課題とのつながりを見出すときにも適用できます。アイデアを実現するための要素を洗い出し、変化させて考えていく。そうすることで、社会課題が持っている要素と自分のアイデアの中に同じ要素が見つけることや、自分のアイデアがそれぞれ要素の関数として表現できることがわかってきます。社会課題と自分がつながることがわかれば、自分事として捉えることができ、自律的に活動するきっかけになります。

 SINIC理論の見方を紹介させていただきました。私も、このような観点で、自分のアイデアをSINIC理論で捉えなおし、活動していきます。
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