COLUMN

2016.06.01戸田 貴

「誰もが幸せになれる国」

4月から新たに研究部の一員となりました戸田です。どうぞよろしくお願いします。
 
先日の日曜日、5月29日は「こ=5、う、ふ=2、く=9」 ということで、若干無理がありますが、「幸福の日」と制定されているそうです。今回私のコラムでは「幸福」について取り上げてみたいと思います。
"今どれくらい幸せですか"と言われても簡単に答えはでないと思いますが、グローバルで幸福度を測るひとつの″ものさし″があります。
 
国連と米コロンビア大学が設立した「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」と同大学の地球研究所が3月に発表した「世界幸福度報告書2016」において、世界157ヶ国を対象とした幸福度のランキングが公開されています。このランキングでは、社会をより健康に、より効率的にする手段として幸せの質を数値化しており、1人当たりのGDP、健康寿命、社会的支援(困ったときに頼れる人の存在)、信用性(政治やビジネスでの汚職のなさ)、人生における選択の自由、寛容性の6つの要素で評価をしています。日本は53位にランクされており、ほかに米国13位、ドイツ16位、英国23位、フランス32位等、先進大国のランクはずば抜けて良くはありません。
 
ランキング上位には、スイス2位、アイスランド3位、ノルウェー4位等、中小国が多数見受けられますが、特に注目すべきなのは、2013年、2014年1位、2015年の3位から今年再び1位に返り咲いたデンマークです。
 
デンマークという国は余り馴染みがないかもしれませんが、北欧の一国で立憲君主制、首都はコペンハーゲンで、レゴやロイヤルコペンハーゲンはこの国の企業です。あと有名なところでは、童話作家・詩人のアンデルセンを輩出しています。人口570万人程度(兵庫県とほぼ同じ)、面積は日本の1割程度(42,930平方キロメートル)しかありません。
 
そのデンマークがどうして幸福度ランキングでトップなのか?労働時間を法律で週37時間に定め、ワークライフバランスがとれているにも関わらず、一人当たりの名目GDPは日本よりも1.6倍高い等、様々な考察がされていますが、やはり最大の理由は、社会保障制度の充実です。医療費が無料、教育費も大学まで全て無料、出産にかかる費用も全て無料、高齢者のケアも国が対応し、失業保険は特に低所得者層にとって手厚い点等、とにかく社会保障制度によって生涯における生活の不安をほぼ払拭してしまう国だからです。ただしその保障のために必要となる莫大な財源をどこから出しているかというと、消費税率25%、国民負担率約70%(日本は43.9%)としてデンマークの国民が担っているのです。
 
自ら働いて得たお金を税金でごっそり持っていかれながら、自分のためにならないところで使われていたら、さぞや不満も出るだろうと思いきや、そのようなことはないみたいです。デンマークの人々は、国に払った分が全て自分に返ってくる必要はないと考えています。それが低所得者や大病を患った人、高齢者他、誰かのためになっている、誰かの幸せにつながっているからと納得をしているのだそうです。
 
「最もよく人を幸福にする人が最もよく幸福になる」
これは、オムロンの創業者立石一真氏の人生訓ですが、この言葉は、幸せは直接つかめるものでなく、人を幸せにすることの反応(結果)で感じるもの、周りが全て幸せになっていったら、自分もいつの間にか幸せになっている、ことを意味しています。
 
デンマークの人々は、まさにこの考えに近いのではないでしょうか。誰もが幸せに暮らせる未来のよりよい社会を描く時に、文化や慣習等が異なるとはいえ、世界一幸福な国デンマークの社会は参考になるかもしれません。
 
 
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