1月の初め、視察に訪れたアメリカ・ラスベガスでのインターナショナルCESは、家電を中心とした製品と技術の最新情報を提供する展示会であった。今回初めて参加した中、およそ3,600社に上る出展があり、40年以上にわたって開催されて続けているという歴史とともにスケールの大きさを強く感じる機会となった。
現地では、初日から3日間かけて広大な展示会場を見て回ったが、毎年開催される中ではその年ごとにトレンドが出てきているという。今年は、モノのインターネットと呼ばれている"IoT(Internet of Things)"が、まさにそれに該当したようだ。そのことは、関連する出展が500社以上を数えたことからもわかる。
今は、私たちの日頃の生活を振り返ってみても、あらゆる身の回りのものが、パソコンやスマホを介して、あるいは、直接ネットとつながる機能を併せ持つようになっている。そして、モノがネットにつながることにより、「モノの状態の把握」、「モノの操作」が可能となってきている。こうした動きが展示会では、さらなる新たな製品、新たなサービスの形となって出てきていた。
「モノの状態の把握」という面では、人の身体状態の把握に関するものが、当然というべきか、数多く出展されていた。センサーやバッテリーなどの小型化・高機能化が進み、人のバイタルをはじめとする身体情報は、大部分が容易に計測できるようになっている。それによって、どの製品も計測データの種類にはそれ程大きな違いはなく、差別化のポイントはデザインやファッション性、ターゲットとなる利用シーンや利用者といったサービス面に移行してきている。
利用シーンでは、特定のスポーツやトレーニングにターゲットを絞り、状態把握だけでなく、適切な動作や効果を生み出すパーソナルトレーナーのような機能に至るものがみられた。また、利用者という点では、赤ちゃんを持つ親を想定したものが、比較的目に付いた。生まれてから間もなく、まだ言葉を発することができない赤ちゃんには、僅かな体調変化にも注意を払う必要があり、大人以上に身体状態の把握へのニーズがあることにあらためて気づかされた。
一方で、「モノの操作」という面では、家のセキュリティや身の回りの自動化したい事柄の製品・サービス化が見られたが、その数自体はまだそれ程多くはなかった。例えば、スマホが鍵の開閉を可能にし、鍵を持たずに済む状態を実現する。あるいは、人が鉢植えの植物に自動で水遣りを行う状態を設定できる、といったものであった。
このように振り返ってみると、IoTでは、モノの状態を把握して、それを適切にフィードバックする。それを受けて、人が行動しやすくなる、もしくは、人の行動を変えていく、という部分がさまざま模索されている。そして、展示がそれ程多くなかったモノの操作というところを考えると、製品やサービスにまで作り上げるには、単に表面的にみえているものではなく、もっと潜在的なニーズや困りごとに目を向けていくことが求められるのであろう。今後、このIoTの分野が人の深層を理解していく助けとして進化していけば、私たちの暮らしをより豊かにしてくれる期待が大いに持てるはずである。