赤・白・青色の色紙で、それぞれ三角形・四角形・円形をつくったとする。それは、赤い三角、赤い四角、赤い丸、白い三角、白い四角・・・と、ひとつとして同じものがない、9つの図形になる。これを3歳の子どもに見せて、どれとどれがなかまだと思う?とたずねたら、どのような答えが返ってくるだろうか。
色に注目して、「赤のなかま」「白のなかま」「青のなかま」と分ける子もいれば、(少数ではあるが)形に注目して「三角のなかま」「四角のなかま」「丸のなかま」に分ける子もいるだろう。いずれにしても、多くの子は迷わずに9つの図形を「なかま」に分けることができる。
しかし、これが4歳、5歳の子になると、結果はかわってくる。年齢に伴って、「正確さを増す」「スピードが速くなる」といった成長を予測する人が多いと思うが、実際にはその逆である。分け方に迷って時間がかかったり、「わからない」という子が多くなるのである。
この変化は一見不可解だが、その後の変化までを視野に入れて考えてみると納得がいく。6歳児に同じ質問をすると、示し方こそ様々ではあるが、「色」と「形」というふたつの要素を二次元的に整理し、「色」の面から見ても「形」の面から見てもきれいに「なかま」に分けられるようになっている。
4、5歳という時期は、なんの疑問も持たずに「色」だけ(あるいは「形」だけ)に注目していた3歳と、「色」と「形」2つの要素を二次元的に整理できるようになる6歳との間の移行期間であるといっていい。この段階にある子は、「色」に加えて「形」に注目し始めることによって、「同じものがひとつもない」ことに気づき、混乱し、試行錯誤する。移行期間の間は、うまく「なかま」分けができないので、その出来具合を表面的に見ると、3歳→4、5歳→6歳でU字型の軌跡をたどることになる。
実はこのような軌跡をたどる「学び」のありかたは珍しくなく、私たちはいろいろなことを単純な解決法→混乱・試行錯誤→より高度な解決法 という道順をたどって身につけている。そして、一見無駄のように思われる混乱と試行錯誤の時期、言いかえればU字の底辺の部分にいる間は、1次元から2次元へと自分の世界を広げるためになくてはならないプロセスなのである。
混乱からの脱出に成功し、より高度な解決方法を見出す瞬間は成長と捉えやすいが、それまでできていたことを急に難しく感じる、その瞬間もまた成長の一歩であることは見逃しやすい。何かに行き詰ったと感じたとき、私は、このU字型の曲線を思い描くようにしている。