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【コラム】伝える「WASHOKU」
鷲尾 梓

 「『和食』が無形文化遺産に ユネスコの事前審査通る」--先月、明るいニュースがメディアを賑わせた。政府が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に提案した「和食 日本人の伝統的な食文化」について、事前審査を担う補助機関が新規登録を求める「記載」の勧告をしたというニュースである。過去の事前審査で記載勧告された提案が覆されたケースはなく、12月には登録が正式に決定される見込みだという。

 

 近年、海外では、和食の人気が高まっている。日本貿易振興機構(ジェトロ)の2010年の調査によると、米国にある和食店数は約1万4千件で、10年前の2倍以上に増加。フランスには約千件、英国には約5百件の和食店があるという。

 和食を目的に訪日する外国人観光客も多い。日本政府観光局が10年に行った調査によると、外国人観光客が訪日前に期待したことで最も多かったのは「食事」(62.5%)となっている。

 

 一方、国内に目を向けると、日本人の和食離れが進んでいる実態がある。

 東京ガス都市生活研究所が首都圏の2080代、約3300人に行った調査では、「みそ汁を毎日1回は飲みたい」という人が、1990年の77%から2011年には65%に減少。特に20代では半数以下となっている。朝食にご飯とパンのどちらを主に食べているかという設問では、ご飯が90年の44%から11年に34%に減少、パンやシリアルは35%から40%に増加している。

 

 学校や地域では、「食育」や「地産地消」など、日本の食文化を守るための積極的な取り組みが始められた。和食が世界の無形文化遺産に登録されることで、日本人自らが和食の魅力を再認識し、次世代に継承する原動力になることが期待されている。

 

 無形文化遺産に登録を申請した「和食」は、すしや刺身など個別の料理を指すのではなく、ご飯にみそ汁、お浸しや煮魚などのおかず、漬物など、「一汁三菜を基本とした、日本の家庭の食事」を指すのだという。国内外に「和食」の魅力をアピールするリーフレットでは、その特徴として以下の4つがあげられている。

「多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重」

「栄養バランスに優れた健康的な食生活」

「自然の美しさや季節の移ろいの表現」

「正月などの年中行事との密接な関わり」

 

 自らを省みると、「新鮮な食材」や「栄養バランス」は日常的に意識してはいるものの、「季節の移ろいの表現」や「年中行事との関わり」を取り入れられているか、と自問すると心許ない。先日も、十五夜、十三夜のしつらえがままならず、インターネット上の情報を頼りに初めて試みたところである。

 

 3歳を迎えた息子の誕生日に子ども用の包丁を贈ったのは、自分なりに日々の暮らしの中で「食」をめぐる文化を伝えていく、という私自身の決意の現れでもある。--伝えていく、というよりも、「共に学んでいく」といった方が正しいかもしれない。「無形」の宝を伝えていくのは、当然のことながら人である。中にいる人が学び続け、価値を信じる文化だけが、未来へと伝えられていくのだろう。

 

 

(参考)農林水産省ウェブサイト

「日本食文化を、ユネスコ無形文化遺産に」

http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/ich/index.html

 


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