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【コラム】ヒヤリハットの学びを活かすために
田口智博

 自転車による事故の増加が、さまざまなところで取り上げられている。そこには自転車の手軽さとは裏腹に、人が亡くなるといった看過できない重大な事故の発生に至るケースまでみられるためである。実際、事故の大半は、自転車走行上の交通ルールやマナーが守られていたならば未然に防げた、あるいは軽減されたに違いないからだ。

 ところで、自転車というと、誰しもが小さい頃、自由に乗りこなせるように少なからず練習に励んだ記憶があるのではないだろうか。補助輪付きの自転車から、それらを外した二輪の状態で自由に乗りこなすには、バランスの取り方などいくつかコツが必要になる。みずからの小さい頃を振り返ってみても、広くて安全なスペースがある河川敷などに出掛けて練習を重ねるうちに、いつしか感覚を掴み乗れるようになっていたように思う。

 ただ、自転車の乗り方をそのように習得する一方、走行のルールといったものは、どこか経験的に学んだ我流のものに限りなく近いことが多いのではないだろうか。「混雑したところを走行する場合、人や車に接触しがちだから注意が必要」、「夜道では無灯火の自転車があるため、周囲への注意は欠かせない」。個人的に積み重ねたヒヤリハット経験がある意味、いかにすれば安全面にケアできるかという学びの材料となって、ルールとして頭の中に刻まれる。そこでは自分本位の安全はあったとしても、周囲の安全というところまではなかなか目が行き届きにくくなりがちだ。

 しかし、実際には自転車は道路交通法上、車両の一種として扱われるとの明記がしっかりとなされている。つまり、自転車は歩道を歩く人の間を縫うように走ることはそもそも許されず、一部の走行可能な歩道を除いて、車道もしくは専用レーンの走行が定められている。また、夜間ともなると無灯火で走行することは禁じられているなど、それらの規則にしたがうことが求められている。明らかに、自身の経験が中心となったルール解釈では、抜け落ちや認識の違いが出てくることは至って当然である。ある種、多発する自転車事故は起こるべくして起こっているといえる。

 最近では、自転車は省エネが叫ばれる状況を追い風に、エネルギー面では効率が良く、環境にも優しい乗り物として注目が高まっている。電動自転車に至っては、販売量が国内でバイクと肩を並べる規模にまで伸びてきているというから、その勢いは十分に感じ取ることができる。
 モノは良くとも使い方が悪いと、本末転倒の自体に陥ってしまうということはよくある話である。自転車も例外ではなく、利用方法さえ間違わなければ多くのメリットが享受できるが、その大前提には決められた規則を守るということがあってこそである。そして、そこに経験から得たことをプラスできれば、潜在的な危険を回避できるという理想の形につながるはずである。こうした認識に今一度立ち戻ることは、個々のヒヤリハットからの学びがより有用な意味を持ち、安全に移動できる環境の実現へと導いてくれることになるであろう。


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