育児・介護休業法の改正案が成立した。改正の大きなねらいのひとつは、小さな子どものいる父親が子育てに携われるよう、環境を整えることにある。この改正が、日本の父親にとって、親子にとって、どんな意味をもつのかを考えてみたい。
まず注目したいのは、「配偶者が常態として子を養育できる労働者は、労使協定で育児休業の対象から除外できる」という規定が廃止されたことだ。・・・つまり、妻が専業主婦(または夫が専業主夫)で、子育てに専念できる場合でも、希望すれば育児休業を取得できることになる。また、父親・母親両方が育休を取る場合には、基本の1年間に2ヶ月間が上乗せされる(パパ・ママ育休プラス)。母親一人が取得する場合よりも期間を長くすることで、父親の育休取得へのインセンティブとするねらいだ。このほか、小さな子どものいる人の勤務時間に配慮する義務(3歳未満の子どもがいる従業員に対する1日6時間の短時間勤務、残業免除)も定められている。
この改正には、とても大きな意味があると思う。母親の就労状況に関わらず、父親も育児に携われる環境を整えるということは、単に「子育ての担い手を確保する」という必要性からだけでなく、父親が一人の親としてもっているはずの権利-そして責任も-を社会として認めることを示すことだと思うからだ。日々、子どもの生活に必要なサポートをする中にあるのは、子育ての「担い手」という役割だけでなく、母親は母親、父親は父親、それぞれが一人の人間として、一対一で子どもと向き合う時間でもあるからだ。
ただ、周囲の若いカップルに話を聞くと、今のところ、この改正に魅力を感じているのは、男性よりも女性の方のようだ。男性たちは、もともと育休を取りたいと思っていた、という人を除けば「たいへんなことになった」というのが、正直な気持ちのようだった。
彼らが強く関心を示していたのは、むしろ、育休を取った人への退職強要や解雇などの「育休切り」や、復職後の不利益な配置転換などを防止するための措置に関することだった。改正法には、違法行為に対する勧告に従わない場合には、企業名を公表する旨も併せて示されている。「子どもをもつのはまだ先のことだから、それまで様子を見て、ほんとうに取っても大丈夫そうだったら、取りたい」・・・一人の男性が話してくれた気持ちは、おそらく多くの男性たちが共感するところだろう。
父親も無理なく育児に携わることのできる社会へ・・・、法改正はその第一歩に過ぎない。しかしそれは、価値のある大きな一歩だと思う。これが、父親たち自身が踏み出す次の一歩につながっていくことを願っている。