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てら子屋コラム

地域に根ざした学びの場づくり
田口智博

 「学び」に関して、最近では、学校や地域を中心として、教え方やカリキュラムなどに独自性を持たせた特色ある取り組みが見られるようになってきている。

 先日、京都伝統工芸大学校という伝統工芸の技術を学べる専修学校を訪れる機会があった。その学校の陶芸や木彫刻などを始めとする伝統工芸習得のカリキュラムでは、実際に作業を行う実習時間の確保が不可欠であるため、週5日のうち3日を実習、1日をデザインという専門実習を8割以上とする実技中心の構成に特徴があった。実際に実習の様子を見せてもらっても、このような伝統工芸技術の教育では、独自の授業カリキュラムでないと成り立たないものだということを強く感じた。

 そうした特色ある教育をされている中で、特に印象的だったことは、講師として教鞭をとられている方が、伝統工芸の各分野で活躍されている本物の職人さんであるということであった。伝統的な技術を学ぶためにそれぞれの分野で熟練の腕を持った方を講師として招くことは困難である中、この学校では、そうした講師の方々を揃え、円滑な運営がなされていた。京都という伝統工芸が根付いた土地柄であることもあるが、こうした職人さんという地域の人々が積極的に学校と深く関わりを持つことで、上手く教えの場づくりにつながっている素晴らしさを感じた。

 また、そのような状況におけるメリットは、学生が本物の職人さんたちに教わることができて非常に恵まれていることと同時に、職人さんにとっても学生という若い人に教えることが生き甲斐となり、非常に活き活きとされて元気になられるとのことであった。このような双方にとって良い影響を与え合う場というのは、まさに教育の中で必要なことだと言える。

つい最近では、東京都内において、小学生を対象に「放課後プログラム」という放課後の遊びを提供する活動をされているNPO団体の方にお話を伺う機会があった。そこでも、地域の人々を掘り起こして講師になってもらい、お菓子作りや家作りなどの様々なプログラムを実施し、小学生のための面白い放課後づくりに取り組んでいた。その中で仰っていたことは、「学校・地域・家庭」の三位一体の中で今一番失われてきたものが地域であり、プログラムの提供などを通して学校と地域のつなぎ役を行い、そうすることで子どもたちが楽しむとともに、講師として参加する地域の大人も元気になるということであった。

 近頃は、学校の教育制度や仕組みなどについてマスコミなどで取り上げられることが比較的多くなっている中で、このような地域に根ざした学びの場を目にすると、教育には学校だけでなく、地域社会やそこで暮らす人々とのつながりをいかに築き、またそれをいかに上手く活かしていくかということの大切さを実感した。今後、このような学校と地域が連携した取り組みが、日本各地で様々な特色を持ちながら広がっていくことを望みたい。


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