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おせちに文化を思う
鷲尾 梓

49.jpg おせち料理を家で作らず、買う人が増えている。
 「食」のトータルサイト「ぐるなび」を運営する株式会社ぐるなびの調査(2006年10月、有効回答519件)によると、「過去におせち料理をセットで購入したことがある」人の割合は38.5%にのぼっている。また、「2007年のおせちはどこで購入したいと思いますか」という問いに対しては、1位デパート(41.4%)、2位スーパー・生協(30.3%)に続いて、3位にインターネットの通信販売(21.2%)が挙げられ、2006年の9.6%から大幅な伸びを見せている。おせち料理を取り巻く状況は、毎年めまぐるしく変化してきている。

 一方で、「この3年間おせちを食べましたか?」という質問には、71.3%の人が「毎年食べている」と回答、「毎年ではないが食べることの方が多かった」(12.3%)と合わせると、おせち料理を食べる習慣を持つ人は全体の83.6%にも及ぶ。

 おせち料理を「作るか?」「買うか?」「どこで買うか?」は変化しても、「お正月におせち料理を食べる」という文化自体はなくならないのだろうか?毎年食べていながら、おせちの起源や意味についてよく知らないことに気づき、調べてみた。

 おせち料理とは、もともと「節句」に神に供える「お節供(おせちく)」を意味するもので、平安時代に宮中で行われていた行事に由来するという。世の中が安定し、食生活が豊かになってきた江戸時代後期に江戸の庶民によって生活に取り入れられたことをきっかけに全国に広まり、節句の一番目にあたる正月にふるまわれるご馳走だけが「おせち料理」と呼ばれるようになったという歴史がある。四季折々の恵みへの感謝と、未来への祈願がこめられており、ひとつひとつの料理に意味があるとされている。

 また、「訪れる神様に失礼のないように」と、炊事の音を極力出さない、火を使うことをできるだけ避ける意味から、保存のきく料理になったといわれているが、「年末のうちにおせちを準備し、お正月はおせち料理を食べる」という習慣が定着した背景には、年末年始に店が開いていなかったり、正月三が日は日々家事に追われる主婦を家事から解放するという現実的な事情もあったと考えられる。

 整理すると、おせち料理には、「日々の恵みに感謝し、未来への祈願をこめる」「年末年始を豊かに、快適に過ごす」というふたつの意味があると言えるだろう。

 しかし今日では、「年末年始を豊かに、快適に過ごす意味」ではおせち料理は必ずしも必要ではなくなってきている。年中無休のスーパーは少なくなく、外食をする場にも困らないし、お正月を祝う豪華な食事なら、おせち料理以外にもたくさんある。

 それでもおせち料理を食べる習慣がなくならないのは、私たちの中のどこかに「日々の恵みに感謝し、未来への祈願をこめる」というおせち料理の意味を尊重する気持ちが根付いているからなのだろう。そして、その伝統を引き継いでいきたいという気持ちを持つ人も少なくない。「おせち料理ぐらいは習慣をくずしたくない」という声はよく聞くし、子どもがいる人の中には、「作る過程を子どもに見せたい」という意識を持つ人もいる。

 しかし、「やっぱりお正月にはおせちが食べたいな」と思わせる一番の原動力になっているのは、家族が集まっておせちを囲む、お正月の記憶なのではないか、と思う。「これがおいしい、あれはおいしくない」「これにはこんな意味がある」などと言い合いながら、家族と過ごした時間や、母や祖母と台所でわいわい準備した時間の記憶が、83.6%もの人におせち料理を作らせたり、買わせたり、「食べたい」と言わせたりしているのではないかと思うのだ。一人ひとりの記憶の積み重ねが、文化をつくり、伝統を受け継いでいくのだ。

<参考> 
■Moreぐるなび フロントライン・リポート 「最近のおせち料理のトレンドとは!?」
■日本文化いろは事典 「おせち」
■goo季節特集 「学んでみよう、おせちの起源」


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