てら子屋
Contents MENU
お問い合わせ HRI HOME
てら子屋とは
てら子屋の活動紹介
お知らせ掲示板
研究室
図書室
てら子屋コラム
てら子屋リンク
トップページへ戻る
てら子屋メンバー専用ページ

てら子屋コラム

"Nature and Culture"
~ デンマークで見つけた、風の谷幼稚園 ~
中間 真一

46.jpg 昨日まで、デンマークのフュン島にあるオーデンセという落ち着いた街に滞在していました。「みにくいアヒルの子」や「裸の王様」などの童話で有名な、アンデルセンが生まれ育った街です。その街からさらに特急インターシティで20分ほど南下したリンゲという街に、以前から一度訪ねたいと思っていた幼稚園がありました。「四季の幼稚園」という幼稚園で、日本でも目にする機会が多くなってきたコンパンという遊具メーカーが、その企業理念を具体的な子どもたちの場を通して示すために開園されたという経緯がある幼稚園です。

 リンゲの駅から歩いて数分、幼稚園の周囲には、ハイウェイやリサイクルセンター、コンパンのオフィスや工場などがあり、手放しで素晴らしい立地とは言い難い。しかし、そのような中で、四季の幼稚園は開園以来10年間、改善に改善を重ねて、子どもたちのための最高の場を目指し、スタッフの手により作り込まれてきた。当日は、あいにく幼児教育関連の公的予算カット提案を受け、幼稚園の先生たちのストライキがあり、園自体は休園で子どもたちの様子を参観することはできなかったのだが、その分、代表者の園長ビア・キルステンさんからは、ゆっくりと園を案内いただきながらお話をうかがえた。

 幼稚園は3歳児から5歳児まで約30名が通園している。幼稚園のコンセプトの中心にあるのが "Nature and Culture" だ。大切な幼児期の子ども達だからこそ、自然の中で思い切り遊び、自然と友人達とのやりとりの中から文化を感じとるセンスの核を築いてほしいという願いの表れである。だから、園の中に入ると、園庭にはたくさんの花が咲き、野菜がつくられ、おいしそうな実をつけたベリーの木が園舎までのアプローチお賑やかに導いてくれる。そして、その先にある園舎は、決して大きな建物ではない。丸くて小さいな園舎は、一つ屋根のもとに子どもたちの安心の場をつくりだしている。園長は「この屋根はアンブレラ、子どもたちを優しく守ってくれる傘なの」と説明してくれた。そして、子どもたちは、雨でも風でも雪でも、暑くても寒くても、とにかく外で遊ぶことを楽しむ。だから、野外とのつながりをスムースにするために、円形の園舎の周囲は、広い縁側のようなバルコニーで縁取られている。ニワトリは鳥インフルエンザ騒ぎ以来、安全が確認されるまで園長の自宅の庭に引き取られているが、ウサギも飼育されている。ニワトリはかわいがって飼育しながら、子どもたちの前でしめられて、子どもたち自らお肉を焼いていただくのだという。園庭には、人気スポットの一つとして、バーベキューやピザ焼きのできる手作りコーナーもある。

 このような園舎や園庭、そして園長が語るのは、「子どもは、遊びから自ら学ぶ。無理に教えることはない。子どもたちが自ら知りたくなった時が、教えるべき時。遊んで疲れればお腹がすくし喉が渇く。そうしたら、自分たちで火を焚いて食べ物をつくったり、コップに飲み物を注いだりすればいい。危ないからと、子どもたちから生活を遠ざけてはだめ。子どもたちは自然な流れの中から、多くを学んでいくのだから」これこそ、この幼稚園のコンセプト「ネイチャーとカルチャー」なのだろう。さらに彼女は言った。「もちろん、そういう保育に対して不安を唱えてくる親もいますよ。ウチの子どもと同じ年齢の近所の子は、もう字が書けるとか、上手に絵を描けるとか。だけど、私はそんなことは全然心配いらないのよと言ってあげる。今、この子は書き方よりも、その美しさやおもしろさを感じ取ることに集中しているところなのだから。貯めているところなの。そんな時に無理に描かせてはもったいないわよ」と。

 こうして、この幼稚園をすみずみまで見せていただき、園長の話を聞きながら、私はとても驚いていた。なぜなら、8年前の開園準備以来、ずっと私が関わってきた風の谷幼稚園と、なぜここまで共通する園なのだろう?本当に同じであり、共感することばかりなのだ。デンマークの片田舎の幼稚園にやってきた私が見たものは、まさに理念としての「風の谷幼稚園」だったのだ。私は驚きのみならず、嬉しさと自信をも感じ取れた。

 なんだかんだと言ったところで、北欧の社会は、日本の10年先を暗示しているのに間違いない。そのデンマークの幼稚園に、風の谷幼稚園を見つけたということは、未来を先取りしていたということに他ならないではないか。自信を持って、風の谷幼稚園が目指す教育、子どもたちにとって、あたりまえの子どもたちのための成長の場づくりを進めればよいということなのだと確信できた。私は、園長に言った。「園長の幼稚園のコンセプトは、ネイチャー&カルチャー、素晴らしいコンセプトだ。そして、私たちが風の谷幼稚園で目指すコンセプトは、子どもたちにとって基盤となるネイチャー&ナーチャーの場づくりなんですよ」と。園長は、「まさに、そのとおりだ」と意気投合となった。リンゲの四季の幼稚園、日本の風の谷幼稚園、この兄弟のようなつながりを、共に自信を持って今後とも高めていきたい。そして、未来を信じて生きていける子どもたちを、支えていきたいものだ。

※風の谷幼稚園ホームページ


てら子屋コラム トップへ バックナンバーへ

HRI Human Renaissance Institute Copyright © Human Renaissance Institute 2007 All Rights Reserved.