北欧の玄関口として賑わう美しい街、コペンハーゲン。この街の中心に、「子どもたちの街」をつくる計画が進められている。
コペンハーゲンは今、急速に成長している。現在約70万人の人口は、2025年までに9万人以上の増加が見込まれ、うち2万2千人は0〜18歳が占めるという。若年層の人口流入に備えるため、コペンハーゲン市は建築家らに革新的なアイディアを募り、街の中心に「子どもたちの街」をつくる「Prinsessegade デイケア&ユースクラブ」計画案が採用された。2014年には、コペンハーゲンの二本の目抜き通りに挟まれた三角地帯にこの「街」が誕生する。
Prinsessegadeは、0〜18歳の異年齢の子ども618人が毎日を過ごす複合型施設で、デンマーク国内で最大規模となる。大きな建物に大人数を収容する従来の施設のあり方とは異なり、小さくて多様な建物が点在するひとつの街のようにデザインされているのが特徴だ。豊かな緑の中に、公園やスタジアム、レストラン、工房、「市役所」などが建つ。敷地外の街並みとの調和も重視され、大きな木や、もともとの地形を活かした設計となっている。子どもたちは、「市役所」でミュージカルを上映したり、キッチンで料理をしてふるまったり、スタジアムでイベントを企画したりと、思い思いに「街」での暮らしを楽しむことができる。子どもだけでなく大人も、わくわくしてしまうような計画だ。
日本では今、保育園の待機児童数の削減に向けて、保育所の設置基準を見直すなどして、文字通りの「居場所」を確保することに大きな意識とエネルギーが注がれている。もちろん、居場所がなければ明日から困ってしまう人がいる限り、目の前のニーズに応えていくことは必要だ。限られたリソースの中で、子どもたちが少しでも豊かな時間を過ごせるよう、努力と工夫を惜しまない現場の人々の姿勢には頭が下がる。そしてコペンハーゲンのPrinsessegadeも、プランに描かれた物理的空間に命を吹き込む、子どもと関わる「人」や活動の「中身」を備えていくのはこれからのことだろう。
しかし、街の中心に「子どもの街」をつくってしまおうという発想と、それを実現してしまうコペンハーゲンの人々の姿勢には、学ぶべきものがある。それは、このプランの設計図そのままに、子どもの存在を中心に据えた社会の姿を体現しているように思えるから。そして、目の前の問題の一歩先にある未来に目を向け、誰が、どのように暮らす「街」をつくりたいのか、社会をつくりたいのかという夢のある「ビジョン」を共有している証のように感じられるからだ。
(Photos: COBE, NORD Architects, PK3 and Grontmij)
■参照サイト:COBE, NORD Architects, PK3 and Grontmij
http://www.cobe.dk/project/prinsessegade-kindergarden-and-youth-club