未来スコープ

ブロックチェーンがアップデートする“人のつながり”

~ALIS・安 昌浩氏インタビュー~

2019.02.01

社会・技術・科学の未来を描き出すヒントを得るために、先進的かつ独創的な未来ビジョンを持つ有識者や、その実現に取り組む革新者へのインタビューを行う「未来スコープ」。

第4回目の今回は、ブロックチェーン技術を用いて人と人のつながりと信頼を可視化し、「経済資本」だけでなく「社会関係資本」にも目が行き届く社会づくりに取り組む、株式会社ALIS・安 昌浩CEOに、HRIの描く自律社会イメージを交えて未来社会の展望を伺った。

ALIS安 昌浩氏

京都大学で核融合を専攻した後、2011年株式会社リクルートに入社。転職メディアの商品企画やHRTech領域の新規事業開発をはじめ、自然言語解析や機械学習領域の事業開発を担当する。2016年、同社の企画部門の最高賞を受賞。 2017年9月ブロックチェーンを用いたALISを立ち上げるため国内初の規模でICOを実施し、4.3億円を調達する。ALISで信頼できる記事と人々にいち早くアクセスできる世界の実現を目指す。現在クローズドβ版(https://alis.to)を稼働中。

社会のルールチェンジ

“テクノロジーが社会を良くする”という思いを持ち、「ずっとどういう世界が来るか?」を考えています。前職のリクルートで新規事業に取り組みながら、社会のルールを大きく変えていくだろうなと感じたものが2つあります。「シンギュラリティ」と「ブロックチェーン」です。

なかでも、「ブロックチェーン」に注目をしました。理由は、非中央集権的に価値のやり取りができること。また、単なる価値の受け渡しだけでなく、経済的な報酬設計も可能になるからです。

世の中が資本主義のルールで動いている限り、富の偏在がなくなることはないでしょう。Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字を取って称される「GAFA」。アメリカを代表する4社のIT企業が、世界時価総額ランキングの上位を占めていることは何かと話題になります。

しかし、「ブロックチェーン」であれば、そんな状況を変えられるかもしれないと考えています。ビットコインをはじめとする仮想通貨の動きのように、資本主義が全く別のものでアップデートされていく可能性を信じて、ブロックチェーン業界に飛び込みました。

Web3.0時代と自律社会

海外に行って話をしていると、日本よりも進んでいるなと感じることがあります。その一つが、“Web3.0の時代”です。これから間違いなくくる未来として注目しています。

Web3.0とは、個人に力を戻すという話です。個人の名前をはじめ、行動履歴や趣味嗜好、健康状態、発信情報といったすべてのもの・コトが個人に帰属する。それらが利用された場合、個人の利益となる時代です。たとえば、個人の投稿記事を使い、それが広告として儲けを得たなら、「それは個人に還元されるべきだよね」という世の中が来るはずです。

オムロンの未来シナリオが次にくるとする“自律社会”は何年先か?。その時期は、私も掴みかねますが、一つカギを握るものがあると感じています。それは、人は何かにコントロールされている限り、結局“自律”という気持ちが芽生えず、先の社会へは進めないだろうということです。

そのため、人の自律化に向けて、個人が自分のあらゆるものを所有し、それらを自由に扱える未来の実現に取り組みたいと思っています。

納得解を与えてくれる個人

ALISは、個人がどんどん力を持つ時代を見越して、その個人が“どういう人なのか?”が重視される未来を捉えています。そこでは、現在のリアルやネットを通して見える個人では、十分とはいえません。また、インフルエンサーと呼ばれる個人が派手に出現して、強い影響力を振るうのも違います。

ALISでは、個人が今以上に、本来の自分自身を表出する場が欠かせないという課題認識を持ち、事業を進めています。コンセプトは、“納得解を与えてくれる個人の表出化”です。今後、正解がなく多様化が進む社会では、「どの個人が、本当の意味で自分を納得させてくれるのか?」が大切になると考えています。たとえば、「あなたの生き様は、私とすごく近いですね」といったように。

個人を表出させる仕組み

“個人の表出化”といってもそう簡単なことではありません。たとえば、個人が考えていることや、身につけているスキルといった把握が必要になります。

そこで、ALISでは、ブログという形で、個人にそれらを書き記してもらうサービスを準備しました。加えて、ブログ自体は目新しいツールではないため、ブログサービスでは、ALISトークンを付与する独自の報酬設計を導入しています。報酬は、ブログ記事にたくさん「いいね」を獲得した人、また記事にいち早く「いいね」を付けた人に与えられる仕組みです。

今まで、私たちが「いいね」の付いていない記事を積極的に読む理由は、見当たりませんでした。しかし、後者の報酬設計は、そのような記事を見に行くインセンティブとして機能しています。現在、サービスは、ユーザー3,000人のクローズドβ版で運営をしていますが、これを利用し始めた個人からは、ブログのアップが続くようになったとの声が数多く寄せられています。

通常のブログでは、記事を書いたとしても何も反応が得られなければ続かないところ、ALISのサービスでは、他の個人から「いいね」のフィードバックをもらうおかげで継続性が増しています。

このように、個人のつながりを媒介に、“個人の表出化”という取り組みの第一歩は検証できつつあります。今後、個人に帰属したデータが、社会全体として積極的に活用していける時代というゴールを目指して、歩みを進めていきたいところです。

人のつながりが財産

社会をよくみていくと、究極的には“人のつながり”でしかないと感じています。事実、個人が直にお金を稼げなくても、人のつながりがあればモノやサービス、お金までも享受できる場面を目の当たりにする時代です。世の中は、「信用・信頼社会」へどんどんシフトしている感覚があります。あらためて、人のつながりこそが、財産だと気づかされます。今後、ブロックチェーンの社会実装が進むと、そのような光景がいろんなところで現れてくるはずです。

個人として理想を語るならば、人々のマインドセットとして、お金ではなく価値を大事にする社会というものを望みたいと思っています。それには、社会がブロックチェーンによって、分散化されていることが正解というわけではありません。個人が持つべきものを、個人が持って活躍ができる社会になるべきだと考えています。あくまでその手段として、自律分散型なのか、あるいは中央集権型なのかという議論があるべきです。未来をイメージする上で、そうある状態となれば、自分自身がより良い社会だと感じるのだと思います。

聞き手のつぶやき

ブロックチェーンは、海外を中心にインターネット以来のパラダイム・シフトを生むとの指摘が少なくない。ブロックチェーンは、個人による情報の管理・活用を可能にする一方で、個人にそれを強制する力が働くという見方もできる。安さんのお話には、「みんな本当にこの社会を望んでいるのだろうかって常に問い続けて事業に取り組んでいるんですよ」との言葉が聞かれた。やはり良くも悪くも、テクノロジーは使い方次第であり、そこに人の知恵が求められる。
(聞き手:田口智博)

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