過去研究テーマ

暮らしの未来

【自律社会としてのスウェーデン(26)】
買い物をしない月

三瓶恵子(ストックホルム在住)
2016.03.01

1か月間買い物をしない、というのは、アメリカなどで以前からあるライフスタイルなのだそうだが、スウェーデンではあまり聞いたことが無い。ところが、スウェーデン中部の大都市であるエーレブロー市では、環境のために買い物をしない月を導入しよう、と市民に呼び掛けているのだ。「気象のための賢い毎日」(Klimatsmart vardag)と名付けられたこのプロジェクトでは、「自転車をもっと使うようにしよう」とか「バルコニーやベランダで植物を栽培しよう」とか、市民に向けて、環境に優しい生活を推奨している。しかし昨年秋「買い物無しの月を導入しよう」という呼びかけた始めた時にはさすがに大きな批判が各方面から起こったのだそうだ。特に地域の産業界はカンカンで、「そんなことを言うのは地方自治体としての権限を逸脱するものだから裁判所に訴えるぞ」とまで非難されたのだそうだ。

そのホームページによれば、平均的なスウェーデン人の消費は年間13トンの二酸化炭素排出量に相当するが、リサイクルを利用したり、貸し借りをしたり、中古品を使用することによって97~100%、環境への影響を少なくすることができる。スウェーデン人は一人当たり年間500㎏の物を捨てている。その多くはまだ使える家具であったり、衣料、電気製品、書籍であったりする。同時に新しい製品が大量に購入される。そして、エーレブロー市は市民に挑戦状を突きつけるのだ。

<挑戦レベル1>

あなたは1か月間、食料品以外、なにも購入しない。図書館で本を借りたり、捨ててある家具を拾ってきたり、誰かと物々交換したり、隣の人と工具を貸し借りしたり、洋服ダンスの中を整理して、要らないものを交換する場所にもっていったりする。誰かを食事に招いたり、無料マッサージ券を誰かにあげたりする。

<挑戦レベル2>

あなたは1か月間、食料品を例外として、新しく作られたものを一切買わない。上記のレベル1と同じようにするが、必要なものはセカンドハンドで調達する。

エーレブロー市ではホームページに挑戦状を受ける記入フォームを用意し、市民が参加を宣言するとともに、プロジェクトのFacebookで交換情報を流したりしている。最近では地域の商工会議所なども、このプロジェクトを好意的に受け入れ始めているとのことだ。

エーレブロー市のプロジェクトは、スウェーデン政府が国庫補助を与える気候変動への地域の取り組みの一環である。国が潤沢な予算をつけ、全国の市や県で地域特有のユニークなプロジェクトが展開されている。

スウェーデン中部のエスキルステューナ市では、廃棄物集積所のリサイクル部門を拡大し、ガラスで覆われたきれいなリサイクリング・センターに変貌させた。廃棄物からリサイクルされた「商品」を販売する店舗(個人ではなく企業が対象)のほかに、レストランや会議場、環境教育センターも併設され、現在11のブティックが開業しているという。今後は貸し自転車拠点なども設置し、事業の拡大を図るとのことだ。

ヨーテボリ市では市民がその消費生活においてどのくらい二酸化炭素を排出しているかを分析するプロジェクトが進行している。一人のヨーテボリ市民が飛行機旅行で排出する二酸化炭素量、食料品に関しての数値、など。そしてそれらの分布を明らかにすることによって、市民の一人一人、またヨーテボリ市が、大気汚染を減少するために、どこから手を付ければよいかを一目瞭然にすることを狙うものだ。

2015年12月12日にCOP21(国連気象変動枠組み条約第21回締約国会議)で各国が5年ごとに自国で打ち立てた目標への到達度愛をチェックするというパリ協定が成立したが、実際の二酸化炭素排出減少の試みは、スウェーデン全国の市の取り組みに現れているような、いわばかなり泥臭い現実的な一歩一歩によるものではないかと思う。

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