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暮らしの未来

【自律社会としてのスウェーデン(22)】
民主主義を進めるためには

三瓶恵子(ストックホルム在住)
2015.11.01

毎年ストックホルム中央統計局で開催される「民主主義セミナー」に参加してきた。いったいどんなことが話し合われるのだろうと興味津々だったのだが、「議員の辞職率を低下させるにはどうしたらよいか」、「いかに投票率を高めればよいか」などという発表が主だった。

スウェーデンにおける選挙は、国会・市議会・県議会が同時に行われる。1994年までは原則として3年に1回だったが、選挙にお金がかかるという理由で近年は4年に一度となっている。

国会の選挙の投票率で見てみると、スウェーデンはヨーロッパでも有数の投票率の高い国だ(図1。上から7番目黄色いのがスウェーデン)。地方選挙(市議会および県議会)の投票率も国会選挙と同時に行われるためか、国会選挙の投票率とほぼ同じであるが、市議会選挙、県議会選挙の順で国会投票率より少し低くなっている(どの年の選挙でも同傾向)。スウェーデンにおける国会選挙投票率の100年間の推移は図2のごとくである。2010年は84.63%、2014年は85.81%であった。最も高かったのは1976年の91.8%である。スウェーデンは1995年からEUに参加しているが、そのヨーロッパ議会選挙に関しては、投票率は低い(2014年は51.07 %)。

スウェーデンの地方議員は原則として「ボランティア」である。つまり議員報酬はなく、議会に参加するときにのみ手当てを受け取る。ストックホルム市議会など大都市では各政党の代表議員は専従となることが多いが、多くの一般議員は他に職を持っている。国会議員には「給料」が出るのでやめる人はほとんどいないが、地方議員は仕事や学業が忙しくなったから(学生議員も結構いる)、とか、仕事や学業の関係でその市・県から転出したから、というのが議員を辞める主な理由なのだそうだ。セミナーでは、転出後も元の居住地での議員活動を続けても良いのではないか、という指摘があった。国会議員はほとんどやめることがないが、9年前に保守・中道連立内閣ができた時には、大臣に抜擢された数人がそれぞれのスキャンダル(文化大臣が国営放送の聴視料を払っていなかったとか、不動産売買で税金逃れをしていたとか)で数日でやめざるを得なかった、という、日本でみられるような出来事があったが、2014年にできた社民党・環境党の連立内閣では事前のチェックが功を奏してかそのような辞任はなかった。

一方、地方議員・国会議員への「脅し」が近年増えてきているという。脅しに負けて辞任する人はまだそれほど多くはないが、気になるところである。

上記のように、2014年の投票率は85.81%であったのだが、セミナーの参加者(発表者ともども)は、もっと高くあるべきだと思っているようだった。投票率を選挙区の地域ごとに細かく分析すると、移民の多い地域や所得の低い住民が多い地域の投票率が低いのだそうだ。そのため、選挙時のみに設立される各政党のPRのための小屋ではなく、選挙自体を広報するより恒常的な「小屋」が必要なのではないかと考えられている。また、障害者の投票率をより高いものにすべきだという議論もなされた。現在の投票場としては地域の市民会館や図書館、学校などが使用されるのだが、完全なバリアフリーのところは少なく、また、視覚障害者のためのヘルプをどうするかも問題だ。ユニークな調査だと思ったのは、選挙の障害として、匂いアレルギーの人たちが、投票場は香水臭いので投票できないと答えていることだ。そういえばスウェーデンのおばあさんたちは外出するときに浴びるように香水を振りかける。病院などでは香水は控えるようにという注意がなされているが、投票場ではそこまでの準備はないようだ。85.81%の投票率はきっと次回は香水注意表示でもう少し上がることだろう。

図1 ヨーロッパ諸国の国会選挙投票率

kurasu022-1.jpg(出所:中央統計局資料)

図2 スウェーデンの国会選挙投票率(1911年~2010年)

kurasu022-2.jpg

(出所:図1に同じ)

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