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暮らしの未来

【自律社会としてのスウェーデン(14)】
本は2月に買うべし

三瓶恵子(ストックホルム在住)
2015.03.01

毎年2月下旬(今年は2月25日)に「ブックレア(本の安売り)」がスウェーデン全国の本屋で開始される。ブックレアの歴史は長く、1920年末に数軒の出版社が自発的に春に安売りを始めたのが最初だといわれている。1930年代からは申し合わせて2月に一斉に開始されるようになった。普段ならば10時開店の本屋がブックレアの開始日には午前7時とか、8時とかに店を開ける。午前2時開店、という広告も見たことがある。事前に出版されるカタログで十分戦略を検討したお客さんたちがリュックを背負い、あるいはカートを引いて店になだれ込む。比較的最近出版された本が20~70%引きくらいの値段を付けられて平積みされている。スウェーデン出版者連盟(SVF)によれば、2015年のブックレアでは約3700冊が安売りされることになっている。ブックレアの売り上げは出版社の年間全売り上げの5%、本屋の年間全売り上げの4%に相当する。

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 スウェーデン人は本好きだ。地下鉄の中でケータイをいじっている人も多いが、ハードカバーの本を読んでいる人も結構多い。子ども用のプレゼントとしても本は喜ばれるので、ブックレアの時にバースデー・プレゼント用に児童書を買いこんでいくおじいちゃんやおばあちゃんたちも多い。クリスマスプレゼント用には11月末からのクリスマスセールがあるが、割引率はブックレアほど大きくはないのでこの時期がチャンスだ。1か月近い長い夏休み用に自分のために本を買う人も多い。

 電子書籍も増えてはいるが、やはり本は紙で読むほうがまだ好まれているようだ。ただ、インターネットで本を買う人は急増しており、それに対抗して店舗を持つ一般の本屋は顧客を惹きつけるためにいろいろな工夫をしている。たとえば、大手のアカデミー・ブックハンデル(Akademibokhandeln)では、大手コーヒーショップ・チェーンと提携して、店舗内にカフェを併設している。取り寄せを頼むとインターネット・ショップ大手であるブークス(Bokus)と提携しているので、そちらで注文してくれ、と言われたりする。デパートばかりでなく、スーパーマーケットの書籍売り場で売られる本も増えてきた。スーパーのレジに並んでいる間に、その横に並べられているペーパーバックを手に取ってそのまま買っていく光景などもみられる。
 表1は2013年の販売チャンネル別書籍販売額統計である。一般書店とインターネット書店の売り上げ額がそれぞれ、18億5000万クローナ(約278億円)、18億クローナ(約270億円)とほぼ拮抗している。総計では66億クローナ(約990億円)であった(付加価値税6%を含まない)。

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 内容別では、一般書籍が43億5000万クローナ(約653億円)、小中高用教材が10億クローナ(150億円)、大学・専門学校用教材が12億5000万クローナ(約188億円)であった。
 新刊本(48ページ以上)の発行は、2011年が1万650冊、2012年が1万648冊、2013年が1万100冊とほぼ横ばいで推移している。大人向け書籍が減少しているのに対し、児童書が着実に毎年増加している。

 ブックレアは毎年恒例の一種の「お祭り」だ。本屋の前を通ると、大きなポスターが貼られ、山のように積まれた本がおいでおいでをしている。このごろ日本でも翻訳が出回り始めたスウェーデンの探偵ミステリー小説作家たちの新作もあるようなので、バスを乗り換えるときにちょっと覗いてみようかと思う。

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