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暮らしの未来

【自律社会としてのスウェーデン(10)】
困った選挙結果

三瓶恵子(ストックホルム在住)
2014.10.01

 9月14日に4年ぶりに行われたスウェーデン総選挙は、穏健党をはじめとする政府4党が軒並み支持率を落とし、左派連合が勝利した。8年続いた保守中道政権に代わり、社民党のレヴェーン党首が新政権を作ることとなったが、表1にみるように第一党の社民党でも得票率は31.0%と低く、ともに内閣を作ることで合意している環境党を合わせても37.9%にしかならない。左派連合としてともに内閣を作るものとみられていた左党は、レヴェーン社民党党首が、左と右のブロックの境界を越えた政治運営をしなければならないと判断したために「左派連合」から外された。「裏切られた」シェーステット左党党首はもちろんカンカンに怒っているが、以下に述べる理由で閣外協力をしなければならないだろう。それは12.9%の得票率で第3党に躍進したスウェーデン民主党の存在だ。スウェーデン民主党は移民排斥を標榜する極右の政党である。前回2010年の選挙で初めて国会入りして以来、右からも左からもつまはじきされてきたが、今回の選挙の結果、実に49人ものスウェーデン民主党国会議員が誕生し、彼らの意向によっていろいろな政治案件が左右されてしまうことになってしまったのだ。左党は福祉に関するプライベート企業の利益を禁止すべきだと強く主張しているために、他の政党から一緒に政治運営はできないとみなされており、レヴェーン社民党党首(彼が首相に指名されるだろう)は、左党を外すことによって、「右」の政党との協力体制を作りたいのだが、これまで8年間「アライアンス」として4党一緒に動いてきて、「左」の政党に対立してきた各政党はいまさら振り上げた手を下すことはできないでいる。
 今後の最大の危機は11月に発表される次年度政府予算案が国会を通るかどうかだ。毎年政府予算案に対抗して野党は別の「影の予算案」を作って国会で多数決を取る。「右」の4党は一緒に予算案を作ることになっていて。もしそれにスウェーデン民主党が票を入れると政府の予算案が否決されてしまうのだ。となると国会は解散し、新たに選挙をしなければならなくなるという前代未聞の事態になってしまう。
 次年度予算案は2015年1月1日から適用される予算案であり、選挙をして新たに作り直している暇もないし、政府が無い状態が何か月も続くことは避けねばならないし、選挙は区にとって莫大な費用と手間がかかる。左党が閣外協力をし、野党4党が影の予算案を提出するとしても、国会での投票の際に棄権票を投じる、というような「大人の対応」をして欲しいと思う。 

 そもそもなぜ「右」の政党は軒並み支持率を落としたのだろうか。特にラインフェルト前首相率いる穏健党は悲惨な急落を示した。社会格差を拡大した「罪」はラインフェルト政権にあるが、それにしても穏健党の凋落はちゃんと説明できない。そしてなぜスウェーデン民主党はこれほどまで伸びたのか。これはやはり「EU移民」と呼ばれる、ルーマニアからの物乞いが目に余る状態になっているからではないかと思う。ストックホルムの目抜き通りであるドロットニングガータンには10メートルおきくらいに物乞いが地面に座っている。今年は夏が長かったので9月に入っても店の外にテーブルを出しているレストランも多かった。その食事を楽しんでいる人々に物乞いが手を突き出して金銭を強要する。「移民」に嫌気がさすのもむべなるかな、と思う。
 スウェーデンの寛容な社会政策が問われている。

表1 主要政党の得票率と議席数
政党名 得票率 議席数
2010年 2014年 2010年 2014年
社民党 30,7 31,0 112 113
環境党 7,3 6,9 25 25
左党 5,6 5,7 19 21
穏健党 30,1 23,3 107 84
中央党 6,6 6,1 23 22
自由党 7,1 5,4 24 19
キリスト民主党 5,6 4,6 19 16
  スウェーデン民主党 5,7 12,9 20 49
  フェミニスト党 0,4 3,1 0 0
  その他 1,0 1,0 0 0
合計 100,0 100,0 349 349

(出所:選挙管理委員会情報より作成)

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