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暮らしの未来

【自律社会としてのスウェーデン(8)】
神聖なる夏休み

三瓶恵子(ストックホルム在住)
2014.08.01

 夏たけなわである。スウェーデン人にとって神聖な夏休みの真っただ中である。普通のまともなレストランは7月初旬から8月上旬までの間閉店している(6月下旬から休みに入るところも多い。その場合は7月いっぱいくらいまで休み)。観光地のレストランは営業しているが、メニューも観光客向けになってしまっている。保育所はほとんどが閉まっていて、数か所の児童をどこか一か所の保育所にまとめ、臨時にオープンしているが、保育所からの「夏休みとらないんですか??」という親へのプレッシャーは大きい。学校は6月第2週くらいから8月第3週くらいまで10週間くらい休み(年や地域によって開始・終了の日が多少異なる)。お役所や図書館などは夏の間(5月~8月)は営業時間短縮。それでも昔に比べればオープン時間は増えたのだ。昔は銀行の夏の営業は週3日だけ、などということもざらにあったのだから。お医者さんや看護師さんたちも長い夏休みを取るので、夏の間に病院にいる医師や看護師は、ほとんど皆派遣企業から借り出された人々や、くじ運悪く残ることになった人(夏休みを取る前は大きなスケジュール表を前に職場で皆真剣な議論を重ねる)など。友人の外科医は「くれぐれも夏には病気になったり怪我したりしないでね」と周りに警告する。今年の夏は全国で1200人の看護師が不足しているそうだ。多くの医師・看護師を抱える県立病院などでは、「夏休みを秋まで延ばしてくれればボーナスを支給する」と引き留めにかかっているが、それでも歩留まり率は低い。上記のように、学童期の子どもがいれば両親が年休をフルに交互に活用しても、ぎりぎり世話ができるかどうかなのだし。

 スウェーデンの年休は「休暇法」(Semesterlag)という法律で決まっている。同法第4条で、雇用人には25日の年休が保証されている(基本的にはその前の年に休暇の権利を貯めるという仕組みになっている。つまりある年の4月に働き始めて、その年の7月に5週間の夏休みを取ることはできない)。土日(祝日も)は含まないので実質的には5週間である(もちろん土日を労働日にしている人々はそれを考慮した数え方になる)。休暇法にはなんと「休暇給与」の項目まで含まれている。そう、スウェーデンで雇用されている人は、休暇中にいつもの給与が割り増しになるのだ(月給の場合は休暇一日につき、月給の0.43%を加算)。取りきれなかった休暇を次の年に繰り越すことは、1年につき5日まで、および最長5年間まで認められているが、休暇を雇用主に「買い取って」もらうようなことはできない。つまり、休暇は「とらなきゃ損」なのだ。25日という、この法律で決まっている年休は最低基準で、多くの場合、労使協定による上乗せがある(組合に入っていれば)。

 夏に4週間、冬に1週間の休暇をとるのが一般的だが、最近では子どもの学校の秋休み(11月)やスポーツ休暇(3月)に合わせて休みをとる労働者も増えてきた。以前は7月に一斉に全国の工場が休みになり、7月の1か月間が社会全体の夏休みだった(「インダストリー休暇」と呼ばれていた)のだが、1995年にスウェーデンがEUに加盟してからは、8月に夏休みをとることが多いEUの他の国々(のビジネス相手)に合わせて、スウェーデンの夏休みが拡散してきてしまっている。つまり、以前は7月だけだったのが、今では6月から8月までの長期にわたるようになってしまったのだ。

 この長い夏休みにスウェーデン人がなにをするかといえば、「日光浴・読書・家の手入れ」である。雨の多い夏が予想されていれば、太陽を求めてチャーター旅行で地中海や南欧へ飛んでいく人も多い。夏に陽光を十分浴びていないと冬に風邪をひきやすくなる、という俗説もある。こんがりと日に焼けた肌はスウェーデン人の憧れだ。今年の夏はこれまでのところ、最初が暑くて(+25℃)、その後寒さ(+10℃)が続き、また暑くなる(+29℃)というアップ・アンド・ダウンの様相を示している。どの時期に夏休みを入れたかどうか、スウェーデン人にとっては運不運(暑い方が望ましい)の落差の大きい夏のようだ。

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