過去研究テーマ

暮らしの未来

【自律社会としてのスウェーデン(4)】
出稼ぎホームレス

三瓶恵子(ストックホルム在住)
2014.04.01

 スウェーデンの都市ではここ数年、物乞いが増えている。地下鉄の駅に続く階段やスーパー・マーケットの入り口に座り込んで、コーヒーの紙コップを差し出し「プリーズ、プリーズ」と泣き声で歩行者に声をかける。あるいは、歩道を杖をついてふらふら行き来し、やはり紙コップを差し出し「ヘイヘイ(スウェーデン語の、やあやあ、という挨拶の言葉)」と道行く人に迫る。道に座り込んで前に帽子を置き、ずっと祈りの姿勢を崩さない人もいる。彼らはスウェーデン人ではない。ルーマニア人だ。

 ルーマニアがEU(欧州連合)に加盟したのは2007年だが、2010年以降急激にスウェーデンに物乞いにやってくる人々が増えた。EU内では行き来の自由と職業の自由が保障されている。つまり、彼らは合法的にスウェーデンに物乞いという「労働」をしに来ているのだ。一部の人々は都市近郊の森の中にバラックを作って集団で住み、不法居住として追い出しにかかる当局といたちごっこを繰り返している。スウェーデン政府はルーマニア大使館にどうにかしてほしいと申し入れを続けているものの埒があかないので、今年に入って社会大臣を招いて現状視察をしてもらった。が、事態は改善していない。背景にはルーマニアの農村部の悲惨な貧困と、ロマ(いわゆるジプシーと呼ばれる一族)への抑圧がある。

 ノルウェーでは物乞いを全般的に禁止しているが、スウェーデンではまだそこまでは至っていない。ストックホルム市にある大きなボランティア組織"スタッツ・ミッション"は今のところ、高齢者や子どもが物乞いに「参加」している場合は、しかるべきケアが受けられるよう努力している。

 スウェーデン人は節約家(ケチともいう)だとずっと思っていたのだが、結構老若男女、皆、物乞いにお金をあげるのでちょっとびっくりする。まあ、小銭一掴みだからせいぜい30クローナ(450円)とか50クローナ(750円)くらいなのだろうけど。

 ルーマニア人とは別に、スウェーデン人のホームレスもいる。社会庁のレポートによれば、2011年5月のスウェーデンのホームレス人数は3万4000だった(この数字には外国生まれの人々も含まれている)。ただちに支援を要するグループ(4500人)はアル中や麻薬中毒とかの問題を抱える人々(多くは男性)で、18歳以下のものも含まれる。第二のグループ(5600人)は、すでに何らかの施設(麻薬やアル中、精神病患者のための施設など)に入っている人々である。第三のグループ(1万3900人)は長期的にホームレスである人々で多くの外国人が含まれる。第四のグループは短期的にどこか住むところは見つけられるがすぐまたホームレスに戻る人々(6800人)で、主として若者がこのグループに属す。多くはアル中や麻薬中毒の傾向がある。この2011年の調査では、初めて、18歳以下のホームレス状況も調査された。約400人が該当し、51%が女子、49%が男子だった。そのうちの35%が外国生まれだった。彼らの多くは友人のところに住んでいた。多くは親に問題があったり、家族関係が壊れていたことが原因だった。

 スウェーデンではホームレスを支援する責任はコミューン(市)にある。社会庁ではコミューンのために、どのようにホームレスに支援を与えればよいかのガイドブックを発行している。社会省にはホームレス問題のコーディネーターに任命されたミカエル・アーネフル氏がおり、積極的に全国を回ったり、コンフェランスを開催したりしている。ストックホルムではホームレスのための雑誌(ホームレスの話題ばかりでなく、ストックホルムの情報誌という性格を持っている)「ストックホルムの状況」(Situation Stockholm)が1995年以来発行されており、ホームレスが売り子となって収入を得ることができる仕組みを確立している。

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