研究員コラム

2003.03.16中間 真一

我ら中年サラリーマンの改善ポテンシャル-組織で働ける幸せって、捨てたモンじゃない-

 このコラム第7回でも調査結果の速報を紹介したが、昨夏より進めてきた「ミドル世代(30代後半と40代)の生き方」調査研究プロジェクトが完了し、今月末には結果をまとめたレポート冊子発行の目処がついた。レポートのタイトルは、「ミドル世代のポテンシャル」だ。

 ミドルという年代は、「ゆとりミニマムの現実直視」の生き方であることは調査結果からも明らかだった。また、今日を生きること、過去を振り返ること、明日を仰ぐこと、これらがちょうど微妙な均衡をとっている時でもあるようだ。そして、これらに、世代(コーホート)の特徴を加えたところに今を生きる30代後半から40代というミドル世代の生き方が見えてくる。

 成長社会のタイム・アップに滑り込んで逃げ切った団塊世代、浮かれて社会に出た途端に梯子を外されたバブル入社組、最初から成長を期待していない若者たち。これら上下の世代に対して、成長社会のコースに乗り続けてゴールするはずが、当てが外れて戦後初の目減り世代となったミドル世代、という程度までは、誰もが言うことだろう。そのもう一歩先に何があるのかが問題だった。

 今回の対象世代に対して、そのまっただ中にいる臨場感と、外側からの冷静な客観性をもってレポートすることは、'59年生まれというまっただ中の私にとって、なかなか辛い道のりであった。しかし、私はあくまでも現ミドル世代は、頼りなくシラけた世代であり、未来への展開を担えずにこのままミイラ化する世代ではないかという見方に対して、最後まで静かなる反発心を持ち続け、ミライへの可能性にこだわった。

 偶然なのか、必然なのか、世の中では中年テーマの映画が流行った。研究熱心な私は、昨年末より、中年流行3作品「なごり雪」、「たそがれ清兵衛」、「壬生義士伝」を観た。もとより涙腺がゆるみがちな私は、どの作品にもポロリぽろぽろと滴をたらしてしまった。もちろん、今を生きる自分自身と重ねたからだ。日本アカデミー賞をはじめ、数々の受賞に輝いた「たそがれ清兵衛」の真田広之は60年生まれ、「壬生義士伝」の中井貴一が61年生まれだ。私の中では、現実のミドルと役の中のミドルが溶け入ってしまい、そこに自分も入り込んでしまいグッと来るものがあった。

 そうなのだ。私が今のミドル世代批判に対して反発を続ける拠り所となっているのは、まさに真田広之や、中井貴一が演じたところの、「組織」「家族」「個人」に対して、自らのプライオリティーを明確に持ちつつも、ムキになってこれらを区別することのない生き方だ。正直に、時には流され、時には流れに逆らい、頼りなげであるが、じつはしたたかに自分を生きる姿にあるのだ。

 世の中は自律の欠けた「個」の自立重視が礼賛され過ぎ、組織で働き続ける価値が必要以上に貶められている。その中で、依然としてサラリーマンで居続けるミドル世代は、いつまでも組織にしがみついているように批判されるが、それは大きな認識不足だ。組織の持つ力の素晴らしさを実体験を通して味わい、組織の中での生きがいの持ち方を心得ているから居続けている人が多いのも確かだ。その上で、組織の中、家族の中、自分の中での生き方を高度な演技力で、あたかも演技ではないかのように気負い無く演じきっている。組織で生きる幸せは、捨てたモンじゃない。「あなたの、エンプロイアビリティは?コンピテンシーは?」なんて個の力を強迫する問いかけにたじろぐ必要は無い。若者の就労観にも詳しい労働経済学者の玄田有史氏と先日お話をした時、彼は「エンプロイアビリティよりも、トレーナビリティ、組織の中で鍛えられて育つ力の方が重要だし価値が大きい」と言っていた。私も全く同感だ。

 私は巨人ファンではないが、昨シーズン巨人監督に就任し、「巨人愛」を掲げ、優勝を勝ち取った原辰徳も58年生まれの同世代ミドルだ。周囲からは「頼りない」、「厳しさに欠ける」などと言われたが、突出して優れた個のある選手ばかりの中を、したたかに組織重視のマネジメントにこだわって成功させた優れたマネジャーだと感じる。彼はコーチ時代、自らの役割を「連絡係」と言い切り、自分の考えが無いかのように批判されたこともある。しかし、監督と選手をつなぐことに徹するコーチとは、ミドルマネジャーの手本であり、組織力最大化の鍵ではないか。変な気負い無く、組織の中の機能を果たし、それにより個人としての大きなハピネスを獲得する。これこそ、私の感じる近未来への自律組織人ミドルのポテンシャルだ。組織社会の問題を融通無碍に改善し、よりよいバランスを保持しながら組織社会の持ち味を生み出せるのは、我らミドルが自信を持ってなし得ることではないだろうか。これは、企業組織だけの問題ではない。地域社会などでも同様だ。すでに兆しは現れ始めている。

 これ以上書くと再び冷静さを失いかねない。ご興味を持っていただければ、ぜひともレポートをお読みいただきたい。私の中年研究テーマは、荒井由美の「卒業写真」でもBGMにして、このあたりでフェード・アウトしようと思う。いや、知人がダビングしてくれた南沙織の「傷つく世代」にしておこうか。

(中間 真一)
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