研究員コラム

2009.11.02内藤 真紀

シリーズテーマ「働き方」#3無遠慮のすすめ

 私生活が充実し従業員が幸せになると、仕事にも活気とゆとりをもって取り組むようになり、おのずと他を惹きつける職場になっていく。前回のコラムで鷲尾さんが描いてくれたのは、人と仕事のとても魅力的な関係だ。
この関係をつくり上げるためには、働き方を見直すことは重要だが、他にも何か大切なものがありそうだ。テーマの「働き方」から逸脱するかもしれないが、今回はここを考えたい。

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 組織風土について調査するため、ある会社の部門や入社年次の異なる社員数十人から話を聞かせていただいたことがある。印象的だったのは、ほとんどの人から「気になることがあっても、自分の仕事の範囲でなければ手を出しにくい」「同僚や先輩に話しかけにくい」「無駄話はおろか会話自体が少ない」など、職場の協力・連帯意識やコミュニケーションの希薄さを示す声が寄せられたことだ。

 職場の協力ムードやコミュニケーションの低下は、社員のモチベーションやチャレンジ意欲にも影響を与えている。「互いに刺激しあったり励ましあったりが少なく、モチベーションを上げるのに苦労する」「もっと仕事をやりやすくするアイデアはあるが、周りの協力が得られそうにないので実現をあきらめる」などの意見が象徴的だ。この状況では、生活の楽しみを充実させ、活気やゆとりをもって職場に臨んだとしても、それを仕事に反映させることは難しいかもしれない。

 調査を通じて感じたのは、社員の疲弊と周りへの無関心、お互いへの過剰な遠慮だ。思い返せば、以前は長時間仕事をしていても気力が充実している人は多かった。10時まで残業してからカラオケに連れて行かれたものだ。月曜日ともなれば、週末に誰が何をしていたか、意識的に語ったり聞いたりしなくても、ほぼ全員が把握していた。仕事上・私生活上両面に対する助言もあちこちで行き交っていた(大きなお世話もあったが)。

 それがいつからか、残業後は個々人ばらばらに帰るようになった。周りの社員が何をしているのか徐々にわからなくなった。先輩に聞きたいことがあっても忙しそうなので遠慮し、自分のわかる範囲で仕事をまとめるようになった。

 そうした状態に私たちは慣れはじめている。自分が仕事をするうえでも、組織として成果を出すためにも、あまりよくはない状態だと感じながら、「職場とはこういうものだ」と諦めてはいないだろうか。そこに疑問を投げかけるのが、状況に風穴を開ける第一歩になりそうだ。

 たとえば「若者は上司との業務外コミュニケーションを敬遠している」という説は、社員旅行や飲みニケーションが駆逐された理由の代表格だが、いまどきの若者はそうでもないらしい。統計数理研究所「日本人の国民性の調査(※)」によれば、「上役との仕事以外のつき合い」について、「あったほうがよい」とする20代が65%。また、「無理な仕事をさせることもあるが、仕事以外でも人の面倒をよく見る課長」に使われたいという20代は76%いるそうだ。

 職場での振舞いにも、第1回コラムにある「チェンジ」を導入するのだ。まずは周りに声をかけてみてはどうだろう。それには私生活が充実しているほうが、関心をもつゆとりも生まれるし話題も豊富になろう。働き方と同時に、職場での振舞いも考え直す。無遠慮なくらいがちょうどいいのではないだろうか。

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 次の担当は田口さん。研究員のなかでも転職経験が豊かな彼は、働き方についてどうみているのだろう。お楽しみに。

※中村 隆・前田 忠彦・土屋 隆裕・松本渉 2009 「国民性の研究 第12次全国調査−2008年全国調査−」 統計数理研究所 研究リポート
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