研究員コラム

2009.02.01鷲尾 梓

迫られる変革 ~ワーク・ライフ・バランスの行方~

 「『特別リフレッシュ休職』希望者を募集」ニュースから飛び込んできた文字に、思わず目をとめた。それは、日本航空が旅行客の急減に応じて人件費を削減するため、全職種を対象に一時休職者を募っている、というニュースだった。原則無給で、長期の旅行などを望む人に一ヶ月単位で休んでもらう制度だという。

 昨年春、ヒューマンルネッサンス研究所では、ワーク・ライフ・バランスに関する男性の希望や悩みを取り上げた書籍、「男たちのワーク・ライフ・バランス」(幻冬舎ルネッサンス)を出版した。その中で、「活き活きと働くための『人生の充電期間』と題して、ベルギーの「タイムクレジット制度」や、スウェーデンの「フリーイヤー制度」など、様々な目的のために取得できる長期休暇制度について紹介した。-日本でもこのような制度が活用できるようになれば・・・、そんな願いを込めて。

 あれから一年も経たないうちに、思わぬ形で「特別リフレッシュ休職」の文字を目にすることになった。背景にある厳しい状況を思うと、複雑な気持ちになる。ベルギーやスウェーデンの場合とは違い、原則無給であることからも、利用にはかなり思い切った決断が必要とされることだろう。

 しかし、考えてみればスウェーデンの「フリーイヤー制度」も、失業者対策という一側面を持って導入された制度である。課題に直面する中で生まれたアイディアであることに変わりはない。それよりも重要なのは、それをどう使うか、ではないか。

 厳しい経済状況を背景に、「一時休職」以外にも、残業や休日出勤の削減など、働く時間の短縮が推し進められている。その加速度は、去年の今頃とは比べものにならない。きっかけは望んだものではない。けれど、今だからこそ気づけること、変われることもあるかもしれない。限られた時間の中で生産性を高める工夫や、経験や人間関係の幅を広げる時間をもつということ-。迫られた変化だとしても、その変化に価値をもたせることはできるはずだ。

 経済の状態が上向いたとき、もとの通りに戻り、また同じことを繰り返すのではなく、より豊かな働き方、生き方を実現することができるかどうか-、私たちは今、その岐路に立っている。
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