COLUMN

2021.02.01田口 智博

コロナ禍の先にみる、守るべきこと、変えるべきこと

 コロナ禍が続く今、私たちがこれまで当たり前のように行っていた遠出が、日常生活の中でままならない状態となり久しい。ちょうど一年前、新型コロナウィルス発見のニュースは、どこか遠くの出来事のように感じられたにもかかわらず。「まさか」という言葉が、これ程までにぴったりとくる現状への驚きが未だに隠せない。冬のこの時期を心待ちに、長野方面にウィンタースポーツを楽しみに出掛けていた昨シーズンの光景が、今では特別感に溢れている。

 1年の間で、ここまでドラスティックに生活環境が変化するというのは、人生の中で一度あるか、ないかであろう。そう思い、信じ、我慢ながら、ステイホームを心掛け、多くの人が一日も早いコロナ禍の終息を願ってやまない日々に違いない。
 しかし、人の移動が社会全体として抑制されることで、経済への悪影響は深刻さを増しつつある。限られた出社の機会ではあるが、道すがら散見される空き店舗の様子などは、現在進行中である危機を実感させられる。コロナ禍当初から指摘されていた感染症対策と経済活動の両立について、問題解決への見通しは「まだか」という思いが否めない。

 私自身、昨年の仕事での遠出となる出張を振り返ると、僅か1度きりであったことが記憶に残る。その機会は、昨年9月、長野県白馬村を訪れるというものであった。
 9月に白馬というと意外な印象を持つ方も少なくないかもしれないが、近年、白馬村は冬だけでなく、夏季のグリーンシーズンの集客にも力を入れている。実際、白馬をたびたび訪れるという人からは、「白馬はオールシーズン楽しめる魅力を備えたエリア」との声が多く聞かれる。実際、私が訪れた時も、コロナ禍でのライフスタイルや働き方の多様化を追い風に、密を避けるキャンプや、仕事と休暇を両立するワーケーションを愉しむ人々が行き交い、まさに白馬が絶好のロケーションである様子が伝わってきた。

 また、白馬を語る上で外せない最近のトピックは、2019年12月の議会定例会において、「白馬村気候非常事態宣言」が表明されたことではないだろうか。気候非常事態宣言は国内では、壱岐市、鎌倉市に次ぐ自治体では3つ目であるものの、長野県内では初となっている。
 そもそもこうした宣言の背景には、白馬村の未来を担う高校生が立ち上がり、「自分たちが暮らす村を気候変動から守りたい」という地域環境のサスティナビリティを目指して起こった運動がきっかけだという。白馬は四季折々の魅力に満ちているものの、誰もが最初に想起する冬季の降雪が、地球温暖化の影響を受けここ最近、減少傾向に歯止めがかからない状況だそうだ。
 コロナ禍の非常事態宣言とは趣が異なるも、こうした動きにも、目を背けることなく向き合うべき時機でもある。特に、白馬地域のように観光業を生業とする地域では、コロナ禍のような人の移動が困難な状況とともに、訪れてもらう魅力ある自然環境が損なわれることも同様に危機となるからだ。

 コロナ禍を俯瞰してみてみると、幸いというべきなのか、こと地球環境に関しては良い作用が働いている。昨年の春先に、大気汚染改善によりインド北部から数十年ぶりにヒマラヤ眺望ができるようになったという話題も、まさにその際たるものだ。
 歴史になぞらえてみても、今のコロナ禍も終息の時期がやがて到来することは確かだ。この難局をくぐり抜けた先には、きっと人が行き交う移動において、これまでとは異なる新たな意味合いがもたらされるのではないだろうか。そんなことを訪れた白馬村での変化からも感じるとともに、それを自分自身がどう行動において、守るべきもの、変えるべきものとして実践していけるかが問われてくるはずだ。
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