COLUMN

2020.04.01矢野 博司

自律社会を考えるきっかけに

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)は、経済的、政治的、そして社会的な混乱をもたらしています。健康上の懸念や各種産業における需要の変動、サプライチェーンの混乱など、金融から航空にいたるまで多くの業界が、すでにその影響を受けています。また、すべての世帯が学校、職場、世帯外の人との接触を減らす、社会距離戦略が採用され、労働だけでなく、生活面や文化面でも影響が出ています。弊社でも、2020年3月25日に、東京都知事の小池知事から「できるだけ仕事を自宅ですることや夜間の外出を控えること、今週末については不要不急の外出を自粛すること」との要請を受けて、在宅勤務しています。(3月31日時点)

 在宅勤務になると、机や椅子、作業場所などの物理的な環境から、メールやサーバーへのアクセスなどセキュリティやネットワーク環境など、自宅と会社の環境は大きく異なるため、様々な課題が表面化しそうです。私の場合、風や外部の音など生活雑音や、視界に入るものが、オフィスとは異なっており、慣れていないだけかもしれませんが、気になってしまいました。やはり気になる人はいるようです。ノイズキャンセリングだけでなく、視界も制限して、集中できる端末(https://ja.wearspace.info/)なども発売されています。

 このように、社会に変化や影響を与え、問題を生み出し、その問題の解決が出現している状況は、SINIC理論の科学-技術-社会の円環的相互関係を、目の当たりにしている状況といえます。つまりSINICのダイナミズムを実感できる機会と捉え、自律社会を考えるきっかけになるのではないかと考えています。
 なんらかの状況変化があり、それに追従する形で、対応が進められている場合、変化をトリガとしてフィードバックするため、対応に時間がかかります。そのため、自分のあり方や未来の自律社会を想定し、そのあり方や社会に向けた準備や想定される影響を前もって対応しておくことで、素早い対応が可能となります。とはいえ、自律社会をどのように考えればいいのでしょうか。

 特に新型コロナウイルスの状況は、場所、時間、対象など様々な観点や条件での問題を表面化させました。そして、感染拡大を止めるための社会距離戦略が、生活面、文化面に影響を与え、その影響により、自分事して捉えることができる状況になったことです。どの観点やどのような対策が効果的だ、効率的だということではなく、今の状況を自分事として捉えることで、今、自分ができることとやりたいことに差異があることに気づけるのではないか、その気づくことが重要です。
 この状況において、気づきがあり、自分ができることを把握することが、自律社会を考えるのきっかけになります。そのうえで、できることを多く持てば、自立を促し、自律分散社会につながりますし、またできることが少なければ、頼れる相手や機会を多く持つことで、連携による自立(共生)や連携による創造(共創)を促すことができます。

社会距離戦略を実施していく中で、自立、連携、創造を考えるきっかけにし、ポジティブに捉えていくことで、この状況を乗り越えたいと思っています。

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