COLUMN

2019.12.02張 智英

「老老共生」が生む超高齢社会の健康生活

 日本が“世界一”と呼ばれるものはいくつもあるが、高齢化率もそのうちの一つである。2015年のデータ(*1)によると、1位日本(26.6%)、2位ドイツ(21.1%)、3位スウェーデン(19.6%)であり、少なくとも2060年まで日本は1位であり続けると予想されている。高齢先進国である日本は、高齢社会をどう成り立たせるかの仕組み構築方法について、世界中から注目されていると言える。この状況を日本の強みととらえると、そのノウハウを世界に輸出するチャンスとも言える。
 最初に高齢社会の課題が何かを具体的に例示したい。ここでは、65歳から80歳の男性高齢者に起こる課題を2つ挙げる。1つは日々何をして良いか分からず暇を持て余す「ワシも族」、2つ目は、身体的、精神的な要因による「引きこもり」である。まず、「ワシも族」は、定年退職して会社という生きがいを無くし、暇を持て余した男性が、妻がどこかにでかけようとすると、とりあえず「ワシも!」と付いてくる現象である。夫婦仲が良いのは良いことだが、極度の妻依存の生活は、単身になった際に生活することが困難になる。また、「引きこもり」は、病気などで体が動かしづらくなって活動範囲が狭くなる身体的な要因、妻など親しい人との別れによる喪失感などの精神的な要因、また仲間や友人、付き合いが少ない、高齢や病気を理由に家族から外出を控えるように言われるなど社会環境的要因により、社会との接点を拒絶し、部屋に引きこもってしまう現象である。この2つの課題に共通する点は、生きがいを上手く見出せず、人や社会との繋がりが薄くなっていることである。ここでは、男性高齢者に起こる課題を挙げたが、もちろん女性にも同じ課題や女性特有の課題は発生する。
 一方で、高齢者が生きがいを見つけ、生き生きとした日々を過ごす仕組みとは何か。そのヒントになる「横浜若葉台団地(以下、若葉台団地)」の例を挙げる。若葉台団地をご存知だろうか、この団地は高度経済成長期に全国各地に建設されたマンモス団地の一つで、活発な住民活動が有名で「要介護にならない団地」として注目を集めている。その所以は、この団地の高齢化率(*2)が49%と全国平均28%を大きく上回っているにもかかわらず、要介護認定率が12%と全国平均の18%を下回っている点である。高齢者が生きがいを見つけ、生き生きとした日々を過ごす仕組みはこの団地のどこにあるのだろうか。その答えは、若葉台団地は住民が入居された1980年代から多数存在している「コミュニティ」である。「グラウンドゴルフ」、「ジョギング」、「英会話」などを始め、現在は220個以上あると言われているが、その数は正確に把握されていない。人によっては、午前中はスポーツ、午後は自治会、老人会と休みがないというほど充実した日々を過ごしている。
 若葉台団地は、多数存在する「コミュニティ」を通じた高齢者同士の「共生」が、高齢者の生きがいを生み出し、その結果として、要介護認定率を下げることができている。新聞やニュースでは、年金などの社会保障問題が多く取り上げられているが、高齢者の生きがいを作る仕組み、すなわち「共生」をどのように構築するかがこれからの日本の論点の一つになるだろう。
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