研究員コラム

2019.11.01小林 勝司

企業の存在意義とミレニアル世代・Z世代の目的意識は共存可能か

 ミレニアル世代(1981~1997年生まれ)とZ世代(1998~2016年生まれ)(※)の価値観を背景に、今、企業の存在意義が問われている。ハーバード・ビジネス・レビューにおける佐宗邦威氏の記事によれば、企業は、生産設備や知的財産を独占するための組織から、自らプラットフォームとなり、人・モノ・カネを呼び込む組織へ変貌しつつあるのだという。今後、長期的な視点で働いてくれる従業員や支援してくれる投資家を集めるためには、企業の存在意義(WHY)、つまりPurposeを明確化し、強く外部に訴えかけ、組織内外の求心力を高めていくことが重要になるらしい。
 経済同友会のレポート『ミレニアル世代がもたらす変化を先取りし、企業の成長戦略の核に』によると、定量調査に基づいたミレニアル世代の価値観として、“働くことの充実感、仕事の目的や大義、自らが情熱・熱意を持てる仕事に就くことを重視する”“仕事を通じ、より良い社会や世界の実現に貢献する意欲を持ち、自らの貢献について実感を得たい”など、仕事と自己実現が一致していると分析されている。そこで、HRIでは、2030年に到来する「自律社会」に向け、企業とミレニアル世代・Z世代の関わり方を探るべくグループインタビューを実施した。
 インタビューの中で、調査対象者に対し、現在の職業や将来の職業をどう捉えているか尋ねてみた。ミレニアル世代からは、「30歳の時点で、その会社にしかいられない状態になりたくない」「将来、年金がもらえないことが気にならないほど稼ぎたい」といった意見が聞かれ、5年後~10年後を人生の大きな節目と捉え、現在の職業を、将来、理想的な選択をするためのセカンド・インターンと位置づけていた。一方、Z世代からは、将来の職業について、「現実を見て、心が折れて一般企業へ務め、趣味で自分のやりたいことをやらざるを得ない」など、自分がやりたいことを支えるための収益源と割り切る対象者と、「(父親から)公認会計士はAIに職を奪われるが、パイロットは奪われないと言われた」など、人生のセーフティーゾーンを求める対象者に二分した。両世代とも、「働くこと」と「やりたいこと」、つまり、仕事と自己実現を切り離して捉えており、「働くこと」自体の目的(WHY)は明確だが、具体的な職種(HOW)や社会で達成したい成果(WHAT)については、将来に先送りしたり、趣味を軸に考えてみたり、親や学校に判断を委ねるなど消極的な姿勢が見られた。恐らく、定量調査では、仕事と自己実現を一致させたいという理想が顕在化し、今回の定性調査では、仕事と自己実現を切り離さざるを得ないという現実と本音が顕在化したと考えられる。
 今後、企業がPurposeを明確化するうえで、ミレニアル世代・Z世代の価値観をどう捉えるかは重要なテーマである。仮に、「働くこと」と「やりたいこと」を切り離さざるを得ないという彼らの本音を重視したとすると、「働くこと」自体の目的に適応した企業組織を目指すのか、それとも「働くこと」と「やりたいこと」、つまり、仕事と自己実現の目的を同時に達成可能な企業組織を目指すのか、どちらのシナリオを選択するかによりそのPurposeは大きく異なってくる。言うまでもなく、2030年に向け、より求心力が高く、多くの人財を呼び込んでいく企業とは後者である。
※ミレニアル世代、Z世代の年齢の定義は、諸説あります。
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