COLUMN

2017.11.01矢野 博司

「SINIC理論」で学んだこと

2017年4月から、研究部の一員になり、半年が過ぎました。新たなソーシャルニーズ創造を目指していますが、様々な情報をうまくまとめ上げていくことができず、日々学んでいます。

先日、立石一真創業記念館に訪問しました。
創業記念館は、創業者の立石一真の創業の精神を伝えるための社員研修用の施設です。施設の中には、創業者の生涯や事業の経緯を記載したパネルや映像展示があり、創業者の手書き原稿や、講演史料や対談史料なども集められています。
訪問目的は、創業者の各種史料から、オムロンの未来シナリオである「SINIC理論」作成の経緯や創業者の思い描いた未来(最適化社会から自律社会)を探索することです。探索については、様々な史料からキーワードを抽出し、未来のイメージにパズルのようにあてはめているところです。

今回は、訪問で感じた内容についてお話ししたいと思います。

創業者の働きがい・生きがいを創造と参画という言葉で説明されていたのを読み、納得感が得られたことです。

創業者は、「サイバネティクス」を提唱したノーバート・ウィーナー博士の言葉から発想した『機械に出来ることは機械に任せ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである』という経営理念を持っていました。
この理念からも、人間の本質は創造であり、それを楽しむべきだ、と捉えていることがわかります。
史料における具体的な記述としては、創造の観点として、『企業は、働くために集まっている。仕事を通じて考え、創造の喜びを味わうことが働きがいであり、働きがいに生きがいを感じるようにする。』とありました。参画の観点では、社員が目標の決定に参画することで、仕事を自分のものとして捉えることができるとして、様々な施策を検討されていました。
また、開発の経緯を語られている史料では、社員との議論中で目標を見出し、目標を具現化していく中で、常に創造の喜びをいかに作り出すのか、という創造と参画のセットになった記述が多くみられました。創造性については、『学びすぎると創造性はなかなかでてこない。ある程度学んだら、情報を遮断して、自分のうちに向かって掘り下げる。』など自らの経験からの観点を述べられていました。
様々な史料の中で、具体的な創造時の苦労や完成の喜びを繰り返し説明されており、自らの経験を丁寧に語られることで、リアリティを感じ、腑に落ちました。

「SINIC理論」では、工業社会から、現在の最適化社会を経て、自律社会に向かっていきます。この自律社会に向かうためには、個人の自律が必須となります。個人の能力に応じて仕事の喜び(働きがい・生きがい)を見いだしていくことが、社会全体の最適化につながり、自律社会に向かうことになります。

これらの理解を通して、私たち一人一人が、これからの社会の中で、様々な機会を捉えて参画し、その中で創造し、創造の喜びを作り出すことや見出そうと行動する。そのような行動が、働きがい・生きがいを生み出し、社会全体を最適化し、個人の自律や自律社会に近づくと感じています。

創業者の域には到達できませんが、身近なところから参画し、小さな創造の喜びを見出していくことが、第一歩になると信じて進んでいきます。
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