COLUMN

2016.03.01今本 浩史

地球温暖化について考える

 2015年11月30日から12月11日までフランス・パリで気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が開催されました。そして、2020年以降の温暖化対策の国際枠組み『パリ協定』を正式に採択しました。 このパリ協定法的拘束力の持つ強い協定として合意されました。
 ここで議論されている地球温暖化について考えたいと思います。地球の温暖化は石炭火力発電など化石燃料の燃焼が原因となって年々進んでいます。特に最近の中国をはじめとした新興国の経済発展に伴うエネルギー需要から温暖化が進み、今世紀末には産業革命前にくらべて、4℃も気温が上昇すると言われています。この地球温暖化が進むと海水面は最大82cm上昇し、そして、食料安全保障に大きなリスクが生じ、人が適応できる限界を超えると言われています。このような状況の中、世界各国で力を併せて温暖化対策を取り組むことは必須のことと言えます。このパリ協定で決まった各国の温暖化対策ですが、各国のすべての目標を達成しても、2.7℃の気温上昇と見積もられ、さらに温室効果ガス排出量を減らすことが必要な状況です。
 日本の取り組みに眼を向けると、2030年に2013年比で温室効果ガスを26%削減が目標となっています。東日本大震災で稼働を止めていた原子力の再稼働や、太陽光発電などの再生可能エネルギーを増加させることが掲げられていますが、石炭火力発電のウェイトは2013年の30%から2030年の26%とわずか4%しか低減されていない目標となっています。石炭火力発電は二酸化炭素をはじめ最も温室効果ガスを多く排出するものであり、先進国を中心に石炭火力発電を減少させようとしています。日本の石炭火力発電の減少が少ない理由はどこにあるのでしょうか?
   石炭火力発電は,他の発電方法とくらべてエネルギーに対する価格が安価で導入しやすい一方で、温室効果ガスの排出量が最も多いという課題があります。日本の石炭火力発電技術は世界中で最も発電効率が高く、石炭火力発電の中で温室効果ガス排出量が少ない特徴があります。インドなどの新興国のさらに高まるエネルギー需要には再生可能エネルギーだけでなく、火力発電も相当量導入が進むと言われています。エネルギー需要が増加する中で温室効果ガスの排出量を削減していくためには、この日本の技術が重要な役割となっていくと期待できます。
   ところで、オムロンでは、1970年に創業者である立石一真が打ち立てた「SINIC理論」という未来予測のシナリオがあり、創業以来未来への"羅針盤"として活用してきました。この「SINIC理論」では、未来予測の中でゴールを2033年に迎える「自然社会」として設定しています。この「自然社会」は、自然のメカニズムから学ぶ、最も調和のとれた理想的な社会を思い描いた到達点であります。このときには温室効果ガスの排出のない、循環型ゼロエミッションが実現され、持続的な社会が実現できている世界をイメージしています。自然社会では、石炭火力発電ではなく、温室効果ガスをださない再生可能エネルギーを中心とした世の中にしていかないといけません。温室効果ガスを排出しないエネルギー、そして、エネルギーの消費を最小にすることが、今後さらに求められます。そして、私が期待している一つの技術が温暖化の増加をマイナスにすることです。温室効果ガスを大気から回収する植物が行っている光合成を人工で作り、大量にばらまけるといいなと思います。
 
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