COLUMN

2016.02.01内藤 真紀

未来を夢見る適齢期とは


 小学生だったか、中学生だったか。「将来の自分について」という作文の宿題が出され、「とりあえず働いていると思う、電話交換手か何かで」と書いたことを先日唐突に思い出した。熟慮した末の内容ではないが、いま思えば、当時は女性オフィスワーカーのイメージはかなり限定的だった。それに、電話交換手という職業はほぼなくなってしまっている。時代の変化を感じずにはいられない。
 

 昔の記憶がよみがえったのは、このところ「10年後の『働く』」について思いを巡らせているからだ。難しい課題で、人口動態や産業構造が変化し、技術革新の進展が加速する昨今、数十年前よりももっと、将来の「働く」を想定するのは困難になっている。

 とはいえ、オムロンがかつて2025年に到来すると予測した「自律社会」をもとにすると、「この仕事をしたい」という意欲・意思と、「この仕事ができる」という能力や技術を循環的に育てていく働き方が描き出されてくる。この働き方を支えるには、個人の能力を引き出し強化すること、関心のあるさまざまな仕事を経験すること、選んだ仕事ができる能力を備えることなどが必要だ。いろいろな仕事を次々手掛けられるよう個人を単位とした組織形態や就労形態を拡大させたり、ライフステージに合わせて時間と場所を選ばず働ける環境を整えたり、生産性を高めるため科学技術をいっそう活用したり、などの社会環境も重要となる。
 

 このような働き方は、少子高齢化による労働力不足に伴う労働市場外の人材の活用促進、環境変化の加速と不連続性を背景にした柔軟で流動性の高い雇用形態の拡大、自ら仕事を創りだす起業家の増加、人の仕事と思われていた分野へのIT・コンピュータの進出など、労働を取り巻く一部の社会トレンドとも合致する。社会トレンドによって生じることを、いかにポジティブに処理し、失業したり不当な労働をさせられたり、置き去りにされる人がいないようにすることが重要になってくる。
 

 これからは、トレンドをポジティブ化する社会環境を整えていく必要があるが、個人一人ひとりの挑戦も不可欠だ。今後日本では、高齢でも働き続ける社会にほぼなっていく。とくに10年後に定年を迎える50代はターニングポイントを迎えているといえるだろう。上の世代がシニアライフのモデルになりにくい世代であり、あらためて将来について、シビアかつ夢をもち、そしてじっくり真面目に考えることが大切になってこよう。「将来の夢」的な宿題は、50代にこそ出されるべきなのではないか。
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