COLUMN

2015.10.01今本 浩史

サイバーフィジカルシステム(CPS)考

  7月から新たに研究部の一員となりました今本です。
IoT(Internet of Things)やトリリオンセンサなどにつづき、サイバー・フィジカル・システム(CPS)という言葉が最近あちらこちらで聞くことが増えてきたと感じています。CPSとは「現実世界の制御対象の様々な状態を数値化し、定量的に分析することで経験と勘でしかわからなかった知見を引き出す仕組みのことであり、具体的には制御対象(例え、人や自動車、製造装置など)にたくさんのセンサを取り付けて、IoT機器でそれらのセンサーデータをクラウド上にビッグデータとして収集し、統計解析して特徴量を抽出することで制御対象を最適に制御する」と記述されています。(※)
 
 このCPSについては、経済産業省や国立研究法人新エネルギー・産業技術総合機構(NEDO)などが中心となって、未来の産業変革にむけて検討を進めています。 ここで描かれている将来像としては、多種多様なデータを賢く解釈することによって、「ドライバーは運転に全く関与しなくて良い完全自動運転の実現」、「健康・医療データを活用した予防医療やオーダーメード医療の実現」、そして「道路などの老朽化、脆弱箇所の予測による予防保全の実現」など、CPSによってもたらされる新たな価値が議論されています。
 
 HRI研究部では、未来社会を描き、そこでの社会的課題から新たなソーシャルニーズの創造に取り組んでいます。この未来社会は、上記CPSが実現しようとしている社会と共通するところが多く、ターゲットとしている産業・流通・健康・環境・社会インフラなどはオムロンの事業とも少なからず関係があります。想定する未来社会像と現状のギャップを埋める一つの方法としてCPSへの期待はさらに膨らんできます。
 
 一方で、筆者の勝手な推測も入りますが、このようなCPSによる未来社会を実現するには、多種多様なセンサが膨大に必要となり、それらの多くは自律的に動作するのではないでしょうか? センサ端末を自律的に動かす高効率環境発電技術や、超低消費電力の電子回路、そして、さらに大量になるビッグデータを扱う無線技術や、賢く・早く処理する人工知能(AI)など、まだまだ多くの先端技術が必要になってくると思います。このような多種多様な技術開発は一つの企業で進めることは難しく、企業間連携、産学官連携など、今まで以上にコラボレーションやオープンイノベーションが進んでいくものと思います。
 
 ところで、オムロンでは、1970年に創業者である立石一真が打ち立てた「SINIC理論」という未来予測のシナリオがあり、創業以来未来への"羅針盤"として活用してきました。この「SINIC理論」では、未来予測の中で2025年から「自律社会」そして、ゴールを2033年に迎える「自然社会」として設定しています。 「自律社会」は「自然社会」への過渡期であり、「自然社会」は、自然のメカニズムから学ぶ、最も調和のとれた理想的な先端社会を思い描いた到達点であります。このシナリオに基づけば、上述した自律センサやAI、そしてビッグデータの取り扱いに関する先端技術が注目されて急速な進化を遂げていることもうなずけます。
 
CPSがもたらす新たな社会像に向けて、今後ますます未来像が具体化し、さらに魅力あふれる社会像が見えてくると思います。このCPSのさまざまな取り組みについて今後も継続的に注目していきたいと思います。
 
7月からHRIで働いています。これまでは主に光センサや微小電気機械システム(MEMS)の企画・研究・開発携わってきました。これからはこのようなデバイスが使われる新たな社会を創造していきます。本業務を通じた新たな情報や発見を発信していきたいと思います。
 
※    http://cyber-physical-system.com/
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