研究員コラム

2015.09.01内藤 真紀

「ま、いいか」を慎もう

 やたらと動物が見たくなり、夏休みにサファリパークと動物園に出かけた。病気のため長時間歩くのが困難な家族と一緒だ。最初に行ったサファリパークは楽だった。車で移動するため、そんな症状の家族と一緒だということすら感じなかった。しかし動物園はそうはいかなかった。
 施設が山の斜面地に広がっているばかりでなく、動物たちをさまざまなアングルから見られるよう工夫されているため、より上下移動が多い。電動アシストの車椅子を借りたのだが、押して歩くのに疲れ果てた。出口直前の坂の途中でバッテリーが切れてしまい、アシストなしには上れず家族を歩かせる始末。自分のためにも、家族のためにも、体力だけは維持していかなくては。そう痛切に感じた。
 
 「老老介護」が社会問題になっている。2013年の「国民生活基礎調査」によれば、介護する人もされる人も65歳以上の例が49.1%にのぼる。体力も気力も年齢とともに減っていくなかで、介護が重労働になっていくのは介護する側もされる側もつらい。そして社会からの孤立をも引き起こす。
 脳血管疾患、認知症、衰弱、骨折・転倒、間接疾患が、介護が必要になる主な原因だそうだが、先日気になることを聞いた。他人と会わなくなることが虚弱を生み、介護が必要になるリスクを高めるというのだ。
 というのも「他人と会わなくなる」→「身だしなみが気にならなくなる」→「食事をとるのも面倒になる」というスパイラルが生まれるらしい。人に会う約束も、入浴や掃除も、しっかり食事をとることも、「ま、やらなくていいか」「ま、適当でいいか」で済ませ続ける結果、衛生状態や栄養状態が悪くなり、虚弱になっていく。外出に何の問題もなかった人でも、いったんこのスパイラルに入ってしまうと歩けなくなる例が散見されるらしい。
 
 数日なら家にこもっていても生活できる便利な社会である。だからこそ、外出をして人と出会うことのよさをあらためて見直すべきなのかもしれない。現在は外出をしない生活が想像できなくても、何かのきっかけで閉じこもりがちになる可能性はある。まずは「ま、いいか」と思わないくらいの積極的に出かけたくなる目的、興味と気力を持ち続けたい。それと、出歩くことが嫌にならないまちづくりに協力することも大切だ。坂道が多いまちであっても、「何かお手伝いが必要ですか?」というひと声が解決できることもきっとある。
 
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