COLUMN

2015.06.01田口 智博

温故知新でみる社会変化


 最近は、「ロボット」に関する話題を耳にする機会が随分増えてきている。そうした背景には、コミュニケーションロボットや介護予防ロボットなどの家庭用ロボットが、新たに市場投入されてきていることが影響しているだろう。
この動きをロボットブームと捉える向きも少なくないようだが、ロボット研究者によると、10年程前にもそのブームはあったという。当時、主流だったものはホビー用ロボットと呼ばれる、ペット型ロボットやサッカーや格闘技用ロボットなどだったが、それをきっかけとしてロボットが社会に広く浸透するようなムーブメントにまでは残念ながら至っていない。
 
 もう一つ、現在では、モノのインターネットと呼ばれるIoTという言葉が盛んに使われ、ビジネスシーンでも大きなトレンドとなっている。実際、ガートナー社の発表による「先進テクノロジのハイプ・サイクル2014年」*では、「モノのインターネット」が先進テクノロジの期待度トップに位置づけられている。
しかし、ここでも10年程前を思い返してみると、「ユビキタス」という言葉が盛んに使われていた時代。当時、ユビキタス社会、ユビキタスネットワークに代表されるように、これらはトレンドとして扱われていた。インフラを張り巡らせる、あるいは、デバイスを散りばめるなどした環境下において、センサーネットワーク網を活かす社会という点では、ユビキタスもIoTもその目指す姿に大きな違いはないといえる。ただ、ユビキタスという言葉は聞かなくなって久しく、IoTに取って代わられてしまっている。
 
ロボットの開発・製造を行う、karakuri products代表・松村氏の話によると、今のロボットブームについて、「ソフトバンクといった通信やIT関連企業などインフラを持つ事業者の参入が特徴的である。今後、ロボットとインフラをあわせて活かすサービス事業が、ロボット普及を後押しする可能性がある」と指摘する。また、IoTのトレンドについては、「省電力性に優れたBluetooth4.0技術の普及が、現在のセンサーネットワーク網の構築につながっている。スマートフォンのようなデータ集約機器はネットワークの中心にしっかりと据えながら、たとえば人の身体状態を測るウェアラブルデバイスといった周辺機器はシンプルな機能化、かつ省電力化に徹しているところが特徴的である」という。
 
このように見ていくと、以前ブームやトレンドになっていたものが、再びその姿かたちを変えて、現在の私たちの暮らしに広く溶け込もうとしていることがわかる。
オムロンの経営の羅針盤である、未来社会予測として提唱されたSINIC理論では、科学と技術と社会の3つが相互にインパクトを与えあっていく中で、社会全体が発展していく流れが示されている。まさに現在のブームやトレンドをみても、そこには社会・暮らしの変化や、科学・技術の発展・進化が相互作用し、新たな社会の姿が形づくられようとしている。社会変化のスピードがますます加速している中、科学・技術・社会の動向や変化の兆しについて些細なことを含めて捉えていくことが、未来社会を考えていく第一歩になるはずである。
 
 
*ガートナー社プレスリリース
http://www.gartner.co.jp/press/html/pr20140903-01.html
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