COLUMN

2014.10.01田口 智博

"共創"のムーブメント

  先日9/27の午後、「アイデアソン」のイベントに足を運んでみた。"アイデアソン"とは、アイデア(idea)とマラソン(marathon)を組み合わせた造語とされている。あらかじめ設定されたテーマについてグループ単位でアイデアを出し合い、それらをまとめて課題の解決、価値の創造につなげるイベントで、最近では新たな活動の起点となりうる取り組みとして注目を集めている。
 
今回、テーマとして掲げられていたのは『VR(Virtual Reality)を体験して考える、人にやさしい次のワークスタイル』。そもそも、この活動は富士通(株)の中に設けられた、「あしたのものづくり研究会」が主体となって、"人のしあわせやくらしにフォーカスしたこれからのものづくりを考える"共創型イベントとして開催されていた。
さまざまな立場の参加者が集う中、技術や製品ありきではなく、個々人が日頃の生活に思いを巡らせ、未来の暮らしを考えていくことが狙いとされていた。HRIでも未来を考える際、生活者の視点に立ちこれからの人と社会の可能性を描いており、まさにその意図は相通じる部分だ。
 
早速アイデアソンのスタートというところで、冒頭にVRへの理解を深めるため、ゲストである三淵啓自氏(デジタルハリウッド大学大学院教授)、鳥越康平氏((株)ツェッペリン代表取締役社長)の両名からの話題提供。また、段ボール製のVRヘッドセット(Google Cardboard)を用いた簡単なVR体験が用意されていた。
こうしたインプットや体感を通してVRというものを頭の片隅に置きながら、まずは一人ひとりが「人にやさしく、これから目指したい働き方」を3つ挙げていく。続いて、その中から"特にこれは目指したい"と思うものを一つ選び、それに対して現状では実現できないでいる要因を思い浮かぶ限り書き出していく。
ここまでの個人ワークを受けて、今度は6名前後のグループごとにそれぞれ内容を共有し、そこに思い思いのコメントを重ねていく。グループの多様なメンバー間のやり取りからインスピレーションを得て、この後、目指したい姿の実現に向けたアイデアの広がりが期待される。
そうして参加者がおのおの課題解決アイデアのコンセプトとイラストを描き終えると、アイデアへの投票へと移っていく。その結果、今回は投票上位の6つのアイデアごとに、また新たなグループを作って中身を深めていくことなった。ここでは、アイデアの詳細な紹介は割愛するが、どのグループの最終発表もアイデアソンスタートから4時間という作業時間を考えると、とても1人では考えの及ばない内容だと実感できる仕上がりであった。
 
近頃は、こうした「アイデアソン」を入口として、さらに実際のモノにまで落とし込む「ハッカソン」("ハック"と"マラソン"を組み合わせた造語)というイベントが数多く実施されている。
前回のこのコラムでは、HRIでフューチャーセッションのアプローチから、未来シナリオをつくり、新たな価値の発見につなげていくことに触れさせてもらった。そうした取り組みを含め、手法は問わずとも、今後いろんな人が集い、創造性豊かに新たなものを共に創り上げていくという機運、またそれに対する期待はますます高まっていくに違いない。
 
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