COLUMN

2014.07.15田口 智博

対話を起点に未来を創造する

 昨年度までの3年間、(公社)日本経済研究センターが主催するこれからの地域社会について考える研究会に参加していた。毎回、ゲスト講師からさまざまな話題提供や示唆を受けながら理解を深め、そこから将来の社会のあり方、そのための打ち手のヒントを得ていくというものであった。
最終回となった2月には、立命館アジア太平洋大学(APU)の牧田正裕教授による「大学と地域振興」というテーマで研究会が催された。偶然にも、ちょうど10月に別府市を訪れ、大学へも足を運ばせてもらったばかりであった。そのおかげで、別府の様子を思い浮かべながら話を聞くことができた。
 
 2000年に開学したAPUは、現在、学生が世界84ヵ国から集い、国内からの学生と合わせると人数はおよそ5,500名。そのような状況もあって、別府市では小中学生と大学生の数がほぼ一緒だという。人口12万の市全体でみると、若者が占める割合は5%だそうだ。大学のキャンパス内の多彩さに止まらず、地域へのインパクトという部分でも大きな効果をもたらしている。牧田教授の言葉を借りれば、まさに「地域において大学がコンテンツとして成立している」ということになる。
 こうした紹介を受けて、研究会では「第2、第3のAPUをつくるにはどうすればよいか?」という議論に及んだ。実際問題として、APU設立には当時の文部科学省でさえも、簡単ではないだろうとの見方を示していたらしい。そうした状況にも関わらず、APUが今に至るには、開学にあたって理事長を中心とする強力なリーダーシップの発揮、アジア圏の高等学校への精力的な留学生のリクルーティング活動があったそうだ。そこには、大学として知名度もなくゼロからのスタートの中、関係するメンバーの"21世紀はアジア・太平洋の時代"であるという発想から、新たな学びの場を創り出したい。そうした共有された強い想いが、行動を牽引する形となって開学の実現にまで無事辿り着くことができたという。
 
 そのような話を聞きつつ、昨年来、私が社外でのフューチャーセッションと呼ばれる場へ足を運んだ時のことを思い出した。
そもそもフューチャーセッションとは、あるテーマに対する想いを持つさまざまな人が集い、対話から発想をして、その場の集合知が時には専門家をも超えうる。それによって、新たなアイデアや協調したアクションの創造を目指すというものである。実際に参加してみると、初対面同士とはいえ自分が日頃感じていることや考えていることについて、それほど構えることなく話せる空間であることが実感できる。
 14年前にAPUが関係者の想いから実現されたという話にあるように、最近では社会全体として、人がそれぞれに持つ想いを起点に一緒に未来を考え、創り出していこうという動きが少しずつ広がりをみせようとしている。ちょうど、HRIでも生活者視点からの未来社会を考えていく上で、フューチャーセッションというアプローチを通して、多様なメンバーと一緒になったシナリオづくりをスタートさせている。今後、到来する可能性のある未来を描きながら、そこでの新たな提供価値の発見へとつなげていきたいところだ。
PAGE TOP