研究員コラム

2012.01.15田口 智博

シリーズ「2012年のキーワード」#2個の発信と伝達のチカラ

 2012年へと年を新たにして、2週間近くが過ぎたところです。昨年の東日本大震災からも10ヵ月が経過しています。震災当時、東京にいた人に話を伺ってみても、未だに直後の1ヶ月余りの計画停電など、日常でのさまざまな支障が強く印象に残っているといいます。それだけにこの間を振り返ってみても、物理的な時間の流れは一定にせよ、人それぞれに感じる流れというものは必ずしも一律ではなかったに違いありません。果たして、今年はどのような一年の流れを感じることになるでしょうか。
 ところで、時の流れと同じように、人の流れという言葉が使われます。観光などでは、いかにそれを活発にして人を呼び込めるかに知恵が絞られています。最近の日本では、震災後の原発事故や急激な円高による影響もあって、海外からの観光客数が思うように伸びていない現状が見受けられます。昨年2011年に限ってみると、外国人観光客数は前年より3割近く少ない600万台前半にとどまるとされています。観光庁では将来的に、年間3千万人という目標を掲げていることを考えると、今後何らかの打ち手が必要になってくるのでは、と感じます。
 一方、日本から海外に旅行に出掛けた人は、震災があったにもかかわらず、円高などを追い風に前年からプラス1.6%と少し増え、1690万人とJTBによって推計されています。 そうした中、先日、海外で旅行業に携わっている人の話を聞いていると、近頃は日本人がこれまで旅行先としていたリゾート地で、韓国や中国などの国が資本を積極的に投入し、進出してきているといいます。経済の成長そのままに、そうしたアジアの国々でも自国の旅行先として新たな開発を推し進めていきたいという思惑があるようです。実際、リゾート地サイドからみても、日本は長期休暇を取って過ごすという慣習があまりなく、また何より従来のように経済面での勢いが感じられないという理由から、かつてのように営業のかけ甲斐がないようです。こうした声を聞くと、需要が日本から他のアジア地域へシフトしていくというのは、供給側の都合からみてもどうやら自然の流れのようです。 ただ、こうした動向は、他のアジア諸国が、日本のこれまでに習って後追い的に同様の振る舞いをしているに過ぎないとみることができます。したがって、ここで日本としてすべきことは、そうした同じ土俵での競争でないことは明らかです。では、そこで一体どのようなことをしていくべきなのか考えていくことが大切になってきます。
 日本の社会では、私たちが日頃の仕事などを通してもわかるように、企業などを中心に変化に挑んでいこうという動きが昨年来強く感じられるようになってきています。今年は特に、そうした変化が個人のレベルからより顕著に発信されるようになり、徐々に実感できるレベルで伝わってくるようになるのではないでしょうか。これは、中間さんのコラムにもありました、"「みんなそれぞれ違うんだ」という大前提のもと"に起こってくるアクションのように感じています。 それが、国内にとどまらず海を越えて多方面に届くようになれば、海外においても徐々に昨年とは違った日本のイメージが形づくられてくるに違いありません。今の時点でこれからの一年を事細かに思い浮かべることは容易ではありませんが、想像を超えるような新たな展開を生み出すような年に、一個人として取り組めるよう、このコラムを書きながら思いを強くしています。
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