COLUMN

2011.03.15内藤 真紀

シリーズ「イノベーションの鍵」#3地域づくりの活動から学んだこと

 3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、被害を受けられた皆様、および被災された方等にご関係のある皆様に、心よりお見舞い申し上げます。住民の皆様ができる限り早く安穏な生活を取り戻すことができますよう、お祈りしております。

 かつて当社では、地域住民の方々自身が地元の魅力を改めて発見し、これを手がかりに自らの暮らしをより豊かなものにしていく「住民主体の地域づくり」の実践研究を、いくつかの地域の方々の協力を得て行っていました。研究活動の一部に参加しとくに印象的だったのは、「こんな遊びがある」「こんな人がいる」「こんな場所がある」など、地元を楽しむ知恵や術をもった人たちによってさらに多彩な楽しみ方が次々と生み出されていくことでした。そして、地域外の人を招いたツアーをしようと提案すると、面白がって企画を考え運営もこなしていたパワーにも圧倒されました。

 何かを楽しんだり面白がるということは、イノベーションの鍵にも通じるのではないでしょうか。誰にでも経験があるでしょうが、面白いと感じているといろいろなアイデアが浮かんだり、仕事がはかどったりします。中間さんの指摘する「洞察」も、田口さんの「常識を再考する」「新たなチャレンジをする」も、面白がることでよりクリティカルになったり、多様な発想ができたり、困難を克服することが可能になるのではないでしょうか。

 とはいえ、「今年度中に新規事業2件」といったノルマ先行型のものや、自分の意志とは関係なく割り当てられた開発プロジェクトなどは、なかなか面白がれません。会社で取り組むイノベーションといえば、こんなケースも少なくないと思います。いわゆる西海岸のガレージベンチャーとはわけが違います。ではどうしたらいいでしょうか。
 これも地域づくり研究での経験ですが、「仲間をつくること」がポイントになると考えます。一緒に取り組むチームメイトや関係者でもいいですし、1人で取り組む場合は話し相手のような存在でOKです。些細な話でもなんでも、語り合うことによって面白がれるポイントを発見できることが多いからです。自分の言葉やアイデアに乗ってくれたり増幅してくれたり、何しろ手ごたえを感じることができます。ただし、何でもしゃべってよし、脱線してもよし、否定しないで建設的な代案を出す、というルールを共有できる相手であることが前提です。納期やコストなどの制限、話の欠点を口にするような場合は論外です。

 今回の震災で被害に遭った岩手県陸前高田市および周辺市町には、こうした地域づくり研究の経験を積ませていただくなどたいへんお世話になりました。1人でも多くの方のご無事と1日も早い地域生活の復旧を念じてやみません
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