研究員コラム

2001.08.01中間 真一

耕せば実る―今だから、コツコツ改善の歓びを―

 自宅の近くに、猫の額ほどの畑を借りて、土いじりを遊んでいる。今は、ちょうど夏野菜まっ盛りだ。うどん粉病で全滅したキュウリもあるが、トマトとナスはワンサカ実る。冗談のつもりで植えたスイカまで、売り物なみにでっかくなった。リスク・ヘッジのためのネギはもちろんOK。耕して育てれば実るという、あたりまえを目いっぱい実感し、嬉しくなっている今日このごろだ。


 さて、あたりまえが、あたりまえにならず、行き詰まっているのが今の日本社会。しかし、「構造改革」「教育改革」「IT革命」など、これまでの問題先送りから一転、骨太改革で一気に世直ししようというトップダウン型問題解決の気運が高まっている。まさに、一歩前進した「あたりまえ」に向けて、実行の時が来たと言えるだろう。そして、私は問題解決のもう一つのアプローチであるボトムアップの「改善」も、今だからこそ忘れずに大事にすべき時だと考える。

 隣の芝生は青いのかもしれないが、成熟社会らしく見えるヨーロッパのオランダやスウェーデン、最近のイギリスのやり方を眺めると、ガラッと改革とコツコツ改善の塩梅が、市民社会の中で旨く進められているように見えてしまう。スーパースターの豪快な大技によるガラッと改革は、観衆を魅了して幸せをもたらす。一方、コツコツ改善は、トライ&エラーの積み重ねだ。しかし、誰もが主人公になれる。一人が積み上げた成果が、大きな成果につながることを、身をもって歓び合うことができ、自らの内側から幸せを生み出せる。外からもらう幸せ、内から生み出す幸せ、両者のいい塩梅こそ、生きている歓びだなどというと、少々おおげさだろうか。

 ところで、「カ行五段改善原則」というものがある。新入社員時代の私が工場の作業改善を通じてたたき込まれ、いまや私の行動原則の一つとなっている。

「か」:観察、「き」:記録、「く」:工夫、「け」:計画、「こ」:行動

 見てのとおり、小学生でもわかる、あたりまえの五段階だ。しかし、着実に成果を味わえる大原則だ。HRIの唱えている「最適化社会」だって、今日までの世の中がガラガラ壊れて、新しい明日が来るとは思えない。一気に土壌を入れ替えるだけでなく、多くの人が身の回りの社会からコツコツ耕し始めれば、おいしい暮らしの場としての社会が実るだろう。こんな社会耕作では悠長が過ぎるのだろうか。けっこう、私の周囲には悠長族が多いのだが。
(中間 真一)
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