所長の独白

2020.04.04

毎朝、朝日新聞の「折々のことば」を真っ先に読みます。四コマ漫画のように、毎日切らさずに、毎日なにか心に残ることばを用意できる鷲田先生の引き出しと、チョイスの目に、少しでも近づきたいと思いつつ一日が始まります。

今日の引用元は、サン=テグジュペリの『人間の土地』でした。この文章、私もおぼろげながら記憶にあったので、本棚から文庫本(新潮文庫、堀口大學訳)を取り出してきました。すぐに引用箇所は見つかりました。新聞記事の前後も加えて再掲してみます。

「彼の真の美質はそれではない。彼の偉大さは、自分に責任を感ずるところにある、自分に対する、郵便物に対する、待っている僚友たちに対する責任、彼はその手中に彼らの歓喜も、彼らの悲嘆も握っていた。彼には、かしこ、生きている人間のあいだに新たに建設されつつあるものに対して責任があった。それに手伝うのが彼の義務だった。彼の職務の範囲内で、彼は多少とも人類の運命に責任があった。
 (中略)人間であるということは、とりもなおさず責任をもつことだ。人間であるということは、自分には関係がないと思われるような不幸な出来事に対して忸怩たることだ。人間であるということは、自分の僚友は勝ち得た勝利を誇りとすることだ。人間であるということは、自分の石をそこに据えながら、世界の建設に加担していると感じることだ。」

この作品は、サン=テグジュペリが15年間の職業飛行家の体験から「人間とは何か?」を小説で表現したものなんだろうと感じます。それは見ず知らずの大勢の人々の歓喜や悲嘆と自分が無縁でなく、つながって関係しているということ、人はそのつながりを維持する責任を持っているというようなことを言っているように思えます。

私は、ふと「人間」という言葉を調べてしまいました。もともと仏教用語で、五道の一つ「人の世界」、つまりは社会だったんですね。Human BeingあるいはManの訳語というよりも、こう考えた方がすんなりわかります。洋の東西を問わず、人間とは何か?の答えが収斂しているような。

さて、Covid-19感染の終息は、まだ見通しが立たないようです。私も、今週はアメリカの知人から「人工呼吸器を急いで開発しているんだけど、大事なパーツの手当ができない。オムロンでなんとかならない?」というメールをもらい、それでなくても超多忙になっている関係者のみなさんに検討をお願いしました。みなさん「自分には関係ないよ」なんていう素振りを全く見せず、必要スペックに適合する商材を調べきってくれました。まさに、『人間の土地』の「人間」そのものでした。

一方、昨晩のテレビ番組では、国内でコロナウイルスに関わる医療従事者に対する差別問題が取り上げられていました。しかし、もっと感染のひどいイタリアの友人のSNSでは、医療従事者を拍手で送り迎えしている映像が紹介されていました。

このカオスを乗り越えてこそ、SINIC理論の未来「自律社会」が来るんじゃないかと感じたりします。その理論構築を導いた立石一真さんは、自律社会への到達には「人間の真の変容が必要だ」と言っています。まさに「今」、それが現実になっているかのようです。刻一刻と感染者が増える中、現実は極めて厳しい状況ですが、「人間力」を世界中で高めるチャンスとして諦めない気持ちも大事にしたいものです。
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