MONOLOGUE

2020.06.11

「自律」ってバラ色なのか?

赤い東京アラートは消えるのでしょうか?先週今週、品川のオフィスに出かけることが増えてきました。山手線も、悪名高い品川駅改札から港南口への回廊も、既にソーシャルニディスタンシングは確保しにくくなっています。

この2ヶ月あまり、僕らが初めて経験した長期間の「お家で仕事」を通じて、SINIC理論の来るべき「自律社会」が、より具体的に手元、足元で考えられる事になってきたと感じています。やはり、身体での実践を通じた思考は、頭の中だけの思考を越えたものがあるなと、改めて現場体験の大切さも感じています。

私の在宅ワークの感想を、メリットと課題から3つずつ挙げてみます。

メリット① 職住近接で移動レスの暮らしのゆとりとゆたかさ獲得
メリット② 個人とチームの仕事の切り分けがつけやすい
メリット③ 時空間の制約を受けずに能力発揮のチャンスを得られる

課題① 職住近接による生活・人間関係のスイッチの曖昧化
課題② 自然発生的な井戸端ブレーン・ストーミングは難しい
課題③ 他者の助けに頼る、力の不足を補ってもらうことが難しくなる

こうしてみると、メリットを活かすも、課題に苦しむも、個人の「自律」にかかっていることがあぶりだされます。自律人は、在宅ワークの「いいとこ取り」ができるわけです。一方、自律に遠く及ばず、それを求めてもいない人にとっては「不満だらけ」になっていくことが想定できます。

ところで、このコロナ禍でも売上をグングン伸ばせるチームの話しを聞きました。要するに、そこには営業の精鋭集団がチームをつくっていて、全国どこにいるお客様に対しても、最高のプロポーザルを出せる力があるというわけです。これまでは、出張してお客様にお会いしてという礼儀が常識だったから、そういうゴールデンチームは作りにくく、その構成メンバーが全国に散らばって活躍しているという姿だったけれど、コロナ禍でテレワークが世間や商取引でも当たり前になった。なので、そういうメンバーが在宅・オンラインでチームとしてつながりながら、個人の力をさらに高めて業務を進め、チームの成果は素晴らしいことになるという実話です。

「いやいや、世の中そんなに「できる人」ばかりじゃないからね」という声も聞こえてきそうです。しかし、できる人にとっては、そういう働き方、生き方が望ましいし、チーム、組織・会社、世の中にも望ましい。この「できる人」って、まさに「自律している人」なんですね。

だから、自律に至っていない人に対しては、自律へのサポートがますます大切になるはずです。しかし、当人が「ぶらさがり」とか「口を開けて待つ」のでは難しい。「我が儘」や「開き直り」でもない。やっぱり、HRIが提唱している「自立」「連携」「創造」、自律社会要件の三拍子、これらを自分の中にもそろえていこうと、内発的に取り組めるガッツと自分へのやさしさが先ず大事。あとは、いろんな場がある中で、どこが自分の三拍子のリズムに合う場なのかを、自ら探して選びとることでしょう。だから、手取り足取りのサポートではないんだと思います。

もちろん、ここまでの話しは、私自身もまだまだ達し得ていないレベルです。先ほどのとおり、在宅ワークの課題を感じているわけですから(笑)。だけど、やっぱり自律社会を目指したくなります。自分もその一員として自律した爺になりたい。しかし、そう簡単には辿り着けない。SINIC理論をつくりあげた立石一真さんは、1970年の当時から「自律社会の実現には、人間の真の変容が必要になる」と、その困難さを断じていました。その意味と先見性が、半世紀を経た今、改めてひしひしと伝わってきます。

自律は、他人事としては素晴らしいし望ましいバラ色の姿、だけど、自分事としては、かなり痛い多くのトゲを経ないと辿り着けない花なんだなと思います。今回のパンデミックは確実に「自律社会」実現への追い風になります。悲しみや痛みも乗り越えて、自分の三拍子のリズムで踊れる場、社会に辿り着きたいものです。

当分は「社会的距離」が必要とされ続けるでしょう。しかし、より大切になるのは「社会的連帯」の方ではないかと感じます。

中間 真一
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