所長の独白

2020.02.23

未来の担い手が受ける都立高校入学試験

東京都立高校の入試問題が新聞の別刷で入ってきた。新型ウイルスの問題で、受験生はさぞかしたいへんだっただろう。私も、かつて我が人生のプライムタイムの約半世紀前、都立高校入試問題に対面していた。そんな若き佳き日を回想しつつ、リビングで日向ぼっこしながら国語の問題を解き始めた。思いの外、のめり込めるおもしろさ。

特に、4問目の読解問題は、私が未来を考える際の拠り所でもある福岡伸一さんの『動的平衡3』からの出題だ。いい部分を取り上げて問題にしているなあ。大原則であるエントロピー増大の法則から始まって、それに抗って秩序やルールをつくって利を得ようとしてきた人間の営みの姿、さらには、38億年かかって学び続けてきた「生命」の歴史は、エントロピーの流れと対峙しつつも、勝ち目の無い体当たりではなく、うまくやり過ごせる知恵を獲得して「いのち」を続けてきたこと、そして、その仕組みのキーワードは「自律分散」だということ。今の中学3年生は、この文章をスラスラ読んで解いていくのか?教科書が読めない子どもたちとか、騒いでいるはずなのに。彼らの正答率を知りたくなった。

設問の中でも「問3」は私も即答できずに問題を再度読み直した。「動的平衡を基本原理として、(大きく)変わらないために(つねに小さく)変わり続けてきたからだ。」とは、どういうことか?中学生には四択でもやや難しいのではないんだろうか?企業の採用にも、こういう問題を自由記述で書いてもらったら、人となりがようわかりそうな気がする。そして、最後の「問5」では「理想の組織」をテーマとした200字以内の自由記述問題。

素晴らしい問題だなと感じ入った。自分の将来のために、一生懸命になってこの問題を考えている中学3年生、彼らこそ未来を担う世代なのだ。HRI的に言えば「自律社会の担い手」なのだ。彼らにとって「動的平衡」な生き方が、すんなりと入って、そのままに生きてくれることを願うばかりだ。自律社会へは「人間の真の変容が必要」だけれど、グレタさんへの反応を見ても、今の大人たちの思考と生き方の延長線上には見通しにくい。しかし、こういう受験問題に刺激を受けて、将来を考える若い人たちには期待できる。あっぱれZ世代!

ぜひ、みなさんも今年の都立高校の国語の問題にチャレンジしてみては!
これで思い出したけれど、僕の中学時代の塾の先生たちは、皆おもしろかった。国語なんて、いきなり亀井勝一郎の『愛の無常について』を一文節ごとに読解していた。あれは、僕の思春期に何を与えたのだろう。

ヒューマンルネッサンス研究所 所長 中間 真一
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